2020年度卒業証書・学位記授与挨拶(2021年3月20日)
令和2年度 学位記及び卒業証書・学位記授与にあたっての挨拶
暖かな太陽に芽吹き始めた草木が春を感じさせ、次なる挑戦への想いと期待で胸おどる季節になりました。本日、広島工業大学に集われた大学院修了生及び学部卒業生の皆さん、修了そして卒業、誠におめでとうございます。本学教職員を代表し、心よりお喜びを申し上げます。
本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、制約のある環境の中で授業や研究を進めなければならず、不便を感じることも多かったと思いますが、皆さんのこれまでの努力が実を結び、この日を迎えられたことを本当に嬉しく思います。
また、本日は保護者の方々のご臨席は叶いませんでしたが、この場をお借りしてご子女のご卒業にお祝いを申し上げますとともに、これまで、本学の教育・研究へ深いご理解とご支援を賜りましたことに感謝を申し上げます。
本日は、新型コロナウイルス感染症の昨今の状況に鑑み、皆さんの健康と安全を第一に考え、全員が一堂に会する形式での学位記授与式及び卒業証書・学位記授与式を取りやめ、専攻及び学科単位で行う手交式とすることとしました。皆さんにとっては、人生の節目である今日の日がこのような形になったことを大変残念に感じていると思いますが、修了または卒業することには違いはありません。良き思い出の日として記憶に残してほしいと思います。
さて、皆さん、大学生活はいかがでしたか。
大学では、建学の精神『教育は愛なり』、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』の2つの教育理念のもと皆さんに接し、修了または卒業後、倫理観ある技術系人材として社会で活躍してもらいたいと考え、教育や支援を行ってきました。皆さんが学んできた教育プログラムは、所属する学科で学ぶ専門的な知識や技術である「専門力」と社会で自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力である「人間力」を2つの柱として構成したものです。
専門力についてはそれぞれのカリキュラムによりその力を身に付けられますが、人間力については教科書で学べば身に付くというものではありません。大学では、この人間力は、サークル活動やボランティア活動、海外留学など、大学内外を問わず、様々なバックグラウンドを持つ人たちと一緒に活動し、多くの経験をすることで身に付くと考えています。そのため、皆さんが学生時代に様々な活動に関わり、多くの経験ができるよう支援してきました。
大学生活を終える今、皆さんは、この専門力と人間力を手にして、社会に巣立っていきます。大学での学びや経験を基に、これから社会で大いに力を奮い活躍されることを期待しています。
皆さんにとって大学生活の最後の年であったこの一年は、誰一人として予測することはできない一年でした。経済にも大きな影を落とし、今、私たちはなんとか新しい日常を見つけ出そうと努力しているところです。これまで人類が経験してこなかった事態にどのように対処するのか、その力が試された一年でした。皆さんも、この状況下で、大所高所から、どのようにすれば安心、安全な生活ができるのか真剣に考えたのではないでしょうか。
皆さんもよく知っているアメリカ合衆国の発明家であり企業家であるトーマス・アルバ・エジソン(Thomas Alva Edison)はこんな言葉を残しています。
It's the door which finds the next new world to be in trouble.
困るということは、次の新しい世界を発見する扉である。
今、世界中が新型コロナウイルス感染症に悩まされ、それぞれの方法でこの難局を乗り越えようとしています。また、これまでの日常に戻るのではなく、この一年の経験を踏まえ、これまでにない新しい日常を作り出そうと試行錯誤しているところです。私たちは、今まさに、この「次の新しい世界を発見する扉」の前に立ち、これからの社会における豊かな暮らし、幸せな暮らしとはどのようなものか、新しい日常はどのように築けば良いのかを真剣に考えているところ、すなわち、新しい世界への扉を開こうとしているところだと捉えることができます。
この一年、私たちは、多くの人が同じ場所に集まり対面で行っていたことを、情報通信技術を駆使して実現してきました。例えば、大学の授業はオンライン授業に切り替わりましたが、企業でもこれまで対面で行われていた会議がオンライン会議になるなど、さまざまなところでデジタル化による新しい可能性を探るきっかけになりました。もちろん、会議などは、その内容によってはオンラインではなく、対面の方が効果的であることがわかるなど、その使い分けが大切だということもわかってきました。いずれにしても、これまでの方法ではできないという大きな壁にぶつかったことで、実現するための方法を考え、新しい仕組みを作り上げることができたのだと思います。
皆さんにはこれから、何に対しても、常に原点に立ち返り、これまで学んだ知識や技術をもとに考え抜き、安心、安全に過ごせる新しい日常を作り出してほしいです。
この新しい日常を作り出す上で大切なことの一つに人とのつながりがあります。これまで大学で同じ時を過ごした友達は一生の友となるでしょう。また今では、私たち、広島工業大学の教職員とのつながりもあります。さらに、今日からは、皆さんも約49,000名を超える本学の同窓生の仲間入りをします。これらのつながりは、どんな時も皆さんの力になってくれることでしょう。大学を離れても大切にしていってください。
これから、皆さんの進む道はそれぞれ異なりますが、考え続けることと人とのつながりを大切にしながら、本学での経験を十分に活かし、また、広島工業大学で学んだことに自信と誇りをもって、地域、日本、さらには、世界で活躍されることを期待して、修了そして卒業に際しての私の挨拶といたします。
令和3年3月20日
広島工業大学 学長 長坂 康史