2022年度 前期末卒業証書・学位記授与式式辞
本日、ここに集われた広島工業大学を卒業される皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんのこれまでの努力が実を結び、本日の卒業証書・学位記授与式を迎えられたことを本当に嬉しく思います。本学教職員を代表し、心よりお喜びを申し上げます。
保護者の皆様、本日は令和4年度前期末卒業証書・学位記授与式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。ご子女のご卒業を心よりお喜び申し上げますとともに、これまで、本学の教育・研究に深いご理解とご支援を賜りましたことに、感謝を申し上げます。
さて、私たちを取り巻く社会に目を向けてみますと、未だ終息を迎えることのない新型コロナ禍により、制約のある生活を強いられている状況が続いています。このように、私たちの暮らしに暗い影を落としている新型コロナウイルス感染症や、世界中が平和で安全、安心な社会を築こうと努力している中で起きたロシアによるウクライナへの侵攻など、社会情勢は日々変化し、すぐ先の未来を予測することも難しくなっています。
これはまさに、VUCAの時代に突入したと言えるでしょう。このVUCA、アルファベットでV、U、C、Aと書きますが、この言葉は変動性を表す英語のVolatility、不確実性のUncertainty、複雑性のComplexity、曖昧性のAmbiguityの頭文字を取って造られた造語です。最初はアメリカの軍事用語として使われていたものですが、今では、変化が激しい情勢や未来の予測が困難な状況を表す言葉として使われています。今の世界情勢を考えると、この言葉がぴったりという印象を受けます。
皆さんは、このVUCAの時代を自らの手で切り拓いて、生きていかなければなりません。
これまでは、人生の先輩たちが見出してきた考え方や解決策などを応用しながら、社会のさまざまな課題に取り組んできました。しかし、変化が激しく、未来の予測が難しいVUCAの時代である今、過去をなぞるだけでは真の解決はできないと言われています。もちろん、過去から学ぶことも大切ですが、これまで経験したことのない時代であるからこそ、その課題をさまざまな角度から捉え、その本質は何かをしっかり見極め、多くの知識を総動員して、自らの頭で考え抜くことが求められます。
皆さんは、大学を卒業して社会に出たら、勉強しなくても良いと感じているかもしれませんが、これからの社会を力強く生き抜くためには、学び続けることが必要です。すぐに活用する場面はやってこないかもしれませんが、必ず、役に立つ時が来ると信じて、一見関係なさそうな分野へもその学びを広げ、自分の頭で考える基盤を作ってください。
大学では、教育理念である建学の精神『教育は愛なり』、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』の下、皆さんが倫理観ある技術系人材として社会で活躍することができる力を身に付けてもらおうと取り組んできました。それぞれの学科で学ぶ専門的な知識や技術である「専門力」のみならず、社会で他者と共に働くために必要な基礎的な力である「人間力」にも着目し、その養成に力を入れてきました。特に、「人間力」を身に付けるためには、大学内外を問わず、多くの人たちと交流し、多くの経験をすることが必要と考え、その支援を行ってきました。
大学時代に得た「専門力」と「人間力」を基礎に、これからも多くを経験し、学び続けることで、次の世代を担う技術系人材になることを期待します。
学び続けることの他にもう一つ、人とのつながりも大切にしてほしいです。これまで大学で同じ時を過ごした友達は一生の友となるでしょう。また、私たち、広島工業大学の教職員とのつながりもあります。さらに、これからは、皆さんも、約50,000名を超える本学の同窓生の仲間入りをします。これらのつながりは、どんな時も皆さんの力になってくれることでしょう。大学を離れても大切にしてください。
最後に、これから、皆さんの進む道はそれぞれ異なりますが、学び続けることと人とのつながりを大切にしながら、本学での経験を十分に活かし、また、広島工業大学で学んだことに自信と誇りをもって、地域、日本、さらには、世界で活躍されることを期待して、卒業に際しての私の挨拶といたします。
広島工業大学 学長 長坂 康史