鮮やかに咲き誇る春の花々や新緑萌える木々も、皆さんの新しい門出を祝っているかのようです。本日、ここ広島工業大学に期待に胸を膨らませて、入学して来られた新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。広島工業大学を代表して、心よりお慶びを申し上げます。

また、ご来賓の皆様におかれましては、ご多忙のところ、新入生の門出をお祝いいただきまして、誠にありがとうございます。

四年前、突然、世界中を混乱の渦に巻き込んだ新型コロナウイルス感染症もやっと落ち着き、新しい日常に移行しつつあります。これまで、日々の生活ばかりでなく、学校行事や部活動が制限されるなど皆さんの学校生活においても多くの苦労があったのでないかと思います。しかしそのような中、皆さんは、自分の未来を切り拓くため、大学進学に向けて懸命に努力してきたことと思います。その努力が実り、今、広島工業大学の学生となった皆さんを心より祝福いたします。

新入生の皆さんに、本学の２つの教育理念を紹介します。

一つ目は、建学の精神『教育は愛なり』です。「愛」すなわち「想い」を持って教育にあたるということを表しています。私たち教職員は、皆さん一人ひとりにしっかりと向き合い、どのような支援ができるかを真剣に考える、そのような「想い」を常に持ち、皆さんの可能性を信じて、教育にあたっています。

二つ目は、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。この言葉には、高い倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、皆さんがそのような高い意識を持った技術系人材となり、社会に羽ばたいていけるよう支援していきます。

さて、世界に目を向けてみますと、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ・イスラエル紛争など、自らの正当性を主張するばかりで、相手のことを無視した軍事衝突が各地で発生しています。また、本年元日に発生した能登半島地震のような予期せぬ自然災害も多数起きています。このような予測困難で不安定な社会情勢の中、安全で安心して生きることができる新しい世界を創り出すために、皆さんには、これまで誰も経験したことのない課題を仲間とともに解決していく力が求められています。

そのため、広島工業大学では、次に挙げる３つの力に着目した教育プログラムを展開しています。

その力とは、学科や専攻で学ぶ専門的な知識や技術である「専門力」、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力である「人間力」、そして、未知の社会課題を自ら発見し、仲間とともに解決する力である「社会実践力」です。

「専門力」は日々の授業で専門的な学びを深めることで身に付けられますが、「人間力」や「社会実践力」はそうではありません。皆さんが自ら行動することが重要です。クラブ・サークル活動や国際交流活動などに参画したり、大学が用意するさまざまな機会や制度を活用するなどして、自らの行動範囲を積極的に拡げていきましょう。

コロナ禍によって、何かを経験する機会や新しいことに挑戦することが少なくなっていました。失敗するのが怖くて新しいことに取り組めないと思うかもしれませんが、社会に出る前に、多くのことに挑戦し、失敗も含めてさまざまな経験をすることが、皆さんの未来を切り拓くことにもなります。新入生の皆さんには、ぜひ、学生のうちに、小さなことでも良いので、失敗を恐れず多くのことに挑戦してほしいです。

さらに、国際平和文化都市である広島で学ぶ意義を考え、多くの異なる文化に触れ、その文化を理解しながら、お互いを尊重し、ともに生きることの大切さも学んでほしいです。自ら考え、経験し、また、さまざまなことに挑戦することこそが、「人間力」や「社会実践力」を伸ばすことにつながると考えています。

大学生活がスタートした今、皆さんは、新しいことに対するワクワクした気持ちと、変化についていくことができるか不安な気持ちの両方を感じていることと思います。その不安を解消するために、新しい人間関係を積極的に構築してほしいです。初めての環境で新しい人間関係を作る勇気と労力を考えただけで、尻込みしてしまうかもしれません。

しかし、皆さんには、同じ学科やいろいろな場面で一緒になった人など、これから多くの時間を過ごすであろう周りの人に、少しだけ勇気を出して声をかけてみてほしいのです。その一声から拡がる関係が、皆さんの未来を支えるエネルギーになると考えるからです。皆さんがこれから講義を受ける場となる講義棟「三宅の森 Nexus21」の４階には、交流を深め共に創る空間「nexus for.」を新しく開設しました。これらの施設も仲間づくりに大いに活用してみてください。

「未来の、その先をつくる。」本学のパーパスであるこの言葉を意識して、皆さんには、これから楽しく充実した学生生活を送りながら、自分自身の近い将来のためだけではなく、はるか遠い未来の世界を意識して貪欲に学ぶことを期待しています。

そして、本学で「専門力」「人間力」「社会実践力」を身に付け、高い倫理観を持ったこれからの社会を担う技術系人材として活躍できる人に成長していくことを楽しみにしています。

皆さんが、健康に十分注意しながら、充実した学生生活を送られることを祈念して、私の式辞といたします。

令和6年4月2日
広島工業大学　学長　　長坂康史