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広島工業大学

建築工学科

中嶋 麻起子

教員紹介

中嶋 麻起子NAKAJIMA Makiko

工学部 建築工学科 講師

研究紹介

プロフィール

【専門分野】
○建築環境工学
○建築設備学
【担当科目】
建築設備A 、 建築設備演習 、 キャリアデザイン演習B 、 社会実践基礎 、 建築基礎図学 、 文献研究
【研究テーマ】
1.気生藻類による外壁汚れに関する研究
2.吹き抜け空間における室内温湿度場に関する研究
3.木材腐朽菌による材料劣化に関する研究
4.住宅内の微生物に関する研究
【ひとこと】

好き嫌いをせずに学び、また、学ぶことを楽しんでください。一見、必要ではないようなことが、この先の人生で大切なものになることがあります。

研究紹介

中嶋 麻起子NAKAJIMA Makiko

工学部 建築工学科 講師

室内での除菌スプレーもやり過ぎると、
むしろ健康に悪影響を及ぼすかも?
PROLOGUE

ソファーが汚れているな、よし!除菌スプレーをシュッ…という具合に、除菌スプレーを多用している人は結構多いのではないでしょうか。悪い細菌などは、早めに退治しておきたいですからね。しかし除菌も、やり過ぎはどうか…と警告するのが中嶋先生。「外出先から帰った時に手先をシュッとやるくらいならともかく、のべつまくなしに除菌し過ぎると、かえって健康に良くないのではないでしょうか」。先生は温度・湿度や住宅内の微生物などの観点から、住環境を研究しています。

室内にある程度の微生物がいないと、アレルギーに弱くなる

私が今、力を入れているのは、住宅の室内に生息する微生物についてです。微生物というと人体に悪さをするのではないか…と思う人もいるかもしれません。しかし、ヨーロッパで実施された大規模な調査によると、農家のような、家畜などを介して多くの微生物に接する環境で子どもの頃から暮らしていると、喘息になりにくいという報告があります。
そう言えば、最近はアレルギー体質の人が増えましたよね。確定的には言えませんが、これも除菌などのやりすぎで、室内環境の微生物が減ったことが原因かもしれません。不衛生な環境は論外ですが、人間はある程度の微生物と共生する方が、健康に良いのではないでしょうか。
とはいえ、室内環境にどんな微生物が、どの程度存在するのか…といったことが全くわかりません。そこで、生物学の専門家などとの協働し、室内環境と微生物の関係や、健康に与える影響を明らかにしようとしているのです。
室内の微生物については生物学者に任せ、建築側の私たちは、室内温湿度・CO₂濃度・VOC(ホルムアルデヒドなど一定量を超えると人体に悪影響を与える物質)などを測り、微生物の分布との相関性を見つけようとしています。

ある程度の種類の微生物がいた方が良い。微生物も「多様性」が大事

カギは「微生物の多様性」です。一種類の微生物だけ…ではなく、いろんな種類の微生物がある程度均一にいた方が良いらしいのです。そのような環境だと、病気の原因になる微生物の数が減るようです。除菌をすると、確実に微生物が減ります。病理性微生物だけ居なくなってくれれば良いですが、そうでない微生物も減り、多様性が失われます。私たちが「除菌のやり過ぎは良くない」と指摘するゆえんです。
住空間にどんな微生物が存在するのか。それを知るため、私自ら被験者となり、宿舎に2ヶ月ほど住んでみました。生物学者によると「住む人によって微生物の状況が変わる」らしいのです。住む人によって接触する人や物が違うし、エアコンの使い方も異なるのだから、あり得る話です。分析はこれからですが、結果が待ち遠しいような、自分の秘密を知られるみたいで恥ずかしいような…不思議な気持ちです。
微生物にとって好ましい環境にも着目しないといけません。室内で快適に過ごせる温度や湿度は、「夏は温度25~28℃で湿度45~60%」と言われますが、これは人間にとっての基準です。微生物まで見据え、バランスの取れる数値に設定できると良いのではないでしょうか。

研究室の外に住宅の外壁を並べ、
温湿度などを調査

藻類による外壁汚れや木材腐朽菌など、いろんな角度から住環境に取り組む

微生物ではありませんが、藻類と住宅の関係も研究しています。住宅が経って年月が経つと、外壁が黒く汚れていきます。あの汚れの主な要因は藻類です。そこで外壁表面の温湿度を調べて藻類の増え方が予測できれば、外壁汚れを減らすのに役立つと考えています。
この研究から派生し、「そもそも人は何を基準に“汚れ”を判定するか」というテーマも進めています。影響するのは汚れている面積と汚れの濃さですが、ではその判断基準はどこか、ということにも着目しています。「買って1年なのに外壁が汚れてきた」というクレームはハウスメーカーによく入るらしいのですが、汚れは主観的なものなので、対応が難しいのです。汚れについて客観的な基準があれば、ハウスメーカーもメンテナンスしやすくなるでしょう。
木材腐朽菌による住宅材の劣化についての研究もあります。木材腐朽菌とはその名の通り木材を劣化させる菌で、放っておくと柱や梁がボロボロになってしまいます。そこで菌の性質を調べ、制御する方法を検討しているのです。他にも吹き抜け空間における室内温湿度の問題などにも取り組んでいます。
人間にとって住環境は、日常活動の基盤です。少しでも快適なものになるよう、成果を積み上げていきたいですね。

住宅外壁は時間が経つと黒く汚れてきます。
この汚れの原因は藻類です