広島工業大学

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広島工業大学

建築工学科

清水 斉

教員紹介

清水 斉SHIMIZU Hitoshi

工学部 建築工学科 教授

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○建築構造計画
○建築構造設計
【担当科目】
建築生産 、 建築維持管理 、 建築施工管理 、 建築材料実験 など
【研究テーマ】
1.耐震性能と生産性を考慮した建築構造設計に関する研究
2.鉄骨造建築物の最適設計に関する研究
3.建築構工法の生産性に関する研究
4.鉄骨構造接合部の性能評価に関する実験的研究
5.3次元オブジェクトCADによる設計・生産・維持管理システムの研究
【ひとこと】

社会に飛び出す前の最後の時間です。どのように過ごすかは、自分次第。
勉強に遊びに、環境に恵まれた広島で、充実した悔いのない学生生活を送ってください。

研究紹介

清水 斉SHIMIZU Hitoshi

工学部 建築工学科 教授

3次元オブジェクトCADを使い、
コンピュータ上で仮想の建物を構築...それが建築の主流に
PROLOGUE

マンションやビルなどを建てる場合、いままでは2次元のCADを使って設計し、その設計図面を元にパースを作ったり施工に入っていました。ところが、実際は立体の建物を2次元で表現しているため、設計者同士のコミュニケーション不足で建物の構造と各種設備がうまくつながっていなかったり、施工者に設計者の意図が伝わらなかったり...といった不具合が発生することも珍しくありません。そうした問題を解消するのが3次元オブジェクトCAD。「今後の建築設計において、3次元オブジェクトCADがますます主流になるだろう」清水先生は、そう語ります。

建築物の完成形が一目でイメージでき、技術者同士の意思疎通が容易になる

一つの建築物を建てるには、さまざまな技術者が必要です。設計分野だけでも、全体的な外観を担当するデザイン設計者、力学的な強さを持たせるため柱や梁など建物の骨組を考える構造設計者、それに照明器具や水道、トイレなどの設備を受け持つ設備設計者と、3種類の設計技術者がいます。そこに施工を担当する施工管理技術者も加わるわけです。
これだけ多くの技術者が互いの意志を理解するには、分かりやすい設計図面があった方がいい。そこで、3次元オブジェクトCADを建築設計に取り入れようという動きがあったのです。
3次元オブジェクトCADは、自動車など機械分野では比較的早い時期に広く普及しましたが、1つの設計図で何万台と生産する分野と異なり、建築物は1つの設計図で1つの建物を建てるのが普通です。建築分野への導入が検討された当初は、わざわざ手間とコストをかけて3次元オブジェクトCAD設計を導入する意味があるのか?という風潮がありました。しかし、ITの急速な進化で環境も整備されてきたため、マンションやビル、戸建住宅などでも、3次元オブジェクトCADが当たり前になってきています。
3次元オブジェクトCADを利用し、コンピュータ上で立体的に建築物を作るこのやり方は「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」と呼ばれます。3次元なので、建築物の完成イメージが一目でわかり、意思疎通をしやすくなるのが大きな特徴です。

3次元オブジェクトCADによる
建物の設計図。
タテにもヨコにも自由に
回転させることができるし、
拡大すると細部の構造、
部材がどう組み合わされるのかまで分かる

部材一つひとつに情報を格納。施工後の建物メンテナンスにも役に立つ

パソコン上で、3次元オブジェクトCADの設計図面の細部を拡大すると、部材の接合部でボルトを何本使っているのか、なども詳細に把握できます。「ボルトを締め付けるための、手を入れる隙間は確保されているか」なども事前に確認できるため、現場で初めて隙間がないことに気づき設計を手直しした、といった無駄も発生しません。
3次元オブジェクトCADの設計図では、建物を構成する部材一つひとつにデータを持たせています。この部材はどの程度のサイズか、梁の幅や厚みはいくらか…ということまで事前にわかるわけです。こういう情報は、施工時はもちろん、施工後も大いに役立つでしょう。建物を長持ちさせるには定期的な改修が不可欠ですが、表から見えない梁や柱の情報があらかじめわかっていると、建物内部の状態が想像できますし、どんな改修を施せばいいか判断しやすくなります。
最近は、建築現場でもタブレット型端末が活用されていて、タブレットに入った3次元の設計図で、情報を確認しながら建築を行うスタイルが一般的になってきています。

丈夫にするだけでなく、建物の美的価値も向上させる「耐震安全性」についても研究

「耐震安全性」についての研究も取り扱っています。2009年、広島工大の『アベベ食堂 9号館店』に、耐震補強工事を施しました。ここで特に心がけたのは「"食堂"としての価値」を損わないことです。
耐震補強をしようと思えば、コンクリートで弱い壁をふさぐのが手っ取り早いんです。しかし、壁でふさいでしまうと、暗くなるし、閉塞感が出てくる。そんな場所で食事してもおいしくないでしょう。やはり、明るくて開放感のある場所が望ましいですよね。
そこでコンクリートに代わり、鋼板を補強材として用いました。それを市松模様に配置することで、壁を全部ふさがなくてもすむようにしたのです。おかげで食堂の明るさを損わず、ちょっとしたオシャレな雰囲気を創り出すことに成功したと思います。
私は、建築物とは「機能と美しさ」が高いレベルで両立したものでないといけない、と考えています。3次元オブジェクトCADや耐震安全性などテーマはいろいろありますが、最終的にはさまざまな知見を集約させ、「機能と美しさ」の両立した建築を手がけたいですね。

アベベ食堂の壁に施された耐震補強。
市松模様の間から日光が注ぎ込み、
食堂にふさわしい明るい空間を形成している