環境土木工学科
大東 延幸
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
-
○都市計画
○交通計画
- 【担当科目】
- 都市計画 、 交通計画 、 景観工学 、 福祉と工学 、 衛星情報デザイン 、 総合ゼミナールII 、 文献研究
- 【研究テーマ】
- 1.利用者の視点に立った公共交通の利便性に関する研究 (公共交通の利用促進を通じて地域の振興と環境保全を!)
- 【ひとこと】
社会では、人とコミュニケーションがとれてナンボの世界です。大学在学中にあるとあらゆる機会を通じて自らのコミュニケーション能力を磨きましょう。
研究紹介
大東 延幸OHHIGASHI Nobuyuki
工学部 環境土木工学科 准教授
渋滞にイライラしない。
そんな交通体系の整備された街をつくるには?
PROLOGUE
早く行こうとマイカーで出たのに、渋滞につかまってイライラ…。結局10km先の目的地に着くのに、1時間もかかってしまった。これじゃあ時間もエネルギーも無駄になってしまいます。なぜこんなことが起こってしまうのでしょう? 「それは、地域の交通計画が整備されていないからです。交通のあり方は、地域の実情によって変わります。交通計画をしっかり見直せば、多くのムダを省き、快適な街をつくることができるのです」と、交通計画を専門とする大東先生は語ります。
地域の実情に合わせた交通計画が実行されているか?
120万人都市である広島市の中心部では、30万人の人が働いています。この人たちは、鉄道・路面電車・バス・マイカーなど様々な交通手段を利用しています。もし30万人がいっせいにマイカー通勤をし始めたら、どうなると思います?
鉄道は1時間に3万人を運べます。バスなら1万人、路面電車は5000人です。ところがマイカーは、1時間あたりせいぜい700人しか運べません。人数だけの問題ではありませんよ。今の広島の道路は、1時間に700台もの車を通すようにはつくられていない。となると、道路を広げてやらないといけません。通勤で使った車を停める駐車場も必要ですが、30万人分となると4平方kmもの広さになる。そんな広い道路や駐車場はつくれるはずがありません。
では、全員マイカー通勤を止め、東京や大阪のように公共交通機関を利用すればいいのか?と言うと、そうはいかない。東京や大阪では、網の目のような路線が構築され、5分間隔で電車が走っています。しかし人口の遥かに少ない広島で同じことをやろうとすると、鉄道会社は大赤字になってしまうでしょう。
大事なのは、地域の実情に合わせた交通計画がなされているか?ということです。
120万人都市と10万人都市とでは、交通のあり方が異なる
人口10万人以下の小さな都市なら、交通の主流はマイカーになります。公共交通機関の発達にも限界があるので、マイカーを使った方が便利です。しかし、その都市と同じ感覚で広島市の住民たちがマイカーを使い始めたら、交通は麻痺します。120万人都市には、規模にあった交通計画があるべきです。一方で、交通と言えば、みんな「車に乗ることだ」と思ってしまう傾向が広島市にはあるようです。
地域の人々が“交通”をどうとらえているか、例えば中古車の広告からでも分かります。東京で中古車広告は、たいてい新聞の折り込みチラシとして提供されています。ところが広島では、新聞の本紙面に掲載されることが多い。これは広島の人々が東京に比べ、車に関する情報に敏感であることを表しています。こうした実情を理解し、その上で人々の発想を変えるよう努力しなければ、交通の無駄は省けません。
さらに、広島市中心部と、広島工業大学のある五日市地区でも、あるべき交通計画には違いがあります。五日市地区の住民の半分は、山の斜面を切り開いた住宅街に住んでいる。彼らが高齢者になったら、交通計画も変わるはずです。高齢者にとって斜面の昇り降りは大変なので、車を使いたがるでしょう。しかし高齢になると車の運転は不安と考える人もいて、そういう人は街中に住みたいと思うようになるかもしれません。こういう状況になったとき、どう“住民の足”を確保するかが重要です
交通計画は、暮らしやすい街づくりに直結する課題。「どこかの地域の真似」では、決してうまくいきません。
交通の無駄を省くことが、暮らしやすい街をつくる第一歩
今までは交通渋滞を緩和するため、新たな道路をつくったり、鉄道などの新路線を引き、人の流れを変えようとしました。しかし今はどの自治体も、予算の余裕がありません。お金をかけずに交通の問題を解決するには、確かな交通計画を構築することが重要です。マイカーと、鉄道・路面電車・バスなどの公共交通機関の使い分けを視野に入れ、どういう状況で何を使えば交通の無駄を省けるか考える。それが、住民に“快適な足”を提供することにつながります。
人間とは「移動する生き物」です。学校に行く、仕事に行く、ショッピングやレジャーに行く…。人間の営みには、どこかに移動し、誰かと出会う行為がつきまといます。その人間の営みを支えるのが交通。確かな交通計画がないと人が流れなくなり、街が活力を失っていきます。広島市や五日市地区が活力ある街であるように、私は、地域のあるべき交通の姿を追究します。