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広島工業大学

環境土木工学科

竹田 宣典

教員紹介

竹田 宣典TAKEDA Nobufumi

工学部 環境土木工学科 教授

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○コンクリート工学
○建設材料学
○土木施工法
【担当科目】
コンクリート工学 、 鉄筋コンクリート工学 、 プレストレストコンクリート 、 維持管理工学
【研究テーマ】
1.塗布型含浸剤によるコンクリートの予防保全技術の開発
2.コンクリートの耐久性評価方法の開発
3.新しいコンクリートの製造技術の開発
【ひとこと】

土木構造物は、人を災害から守り快適な生活を提供し、安全・安心な社会を創るために必要なものです。それらの設計や施工をする土木技術者は、人のためになるやり甲斐のある素晴らしい仕事をしています。

研究紹介

竹田 宣典TAKEDA Nobufumi

工学部 環境土木工学科 教授

コンクリートも"病気"になる。
コンクリートを健康に保ち、⻑く使い続けるには?
PROLOGUE

ビルや橋、ダムに道路にトンネル…私たちの⾝近にある建築物・構造物の⼤半は、コンクリートによって造られています。頑丈なコンクリートですが、⻑い年⽉が経つと⼈間の体と同じように⽼化したり、"病気"にかかったりもするのです。コンクリートの劣化は、道路やトンネルが崩れるなどの⼤事故につながりかねません。そこで「コンクリートを⻑持ちさせる」研究を進めているのが⽵⽥先⽣。コンクリートの劣化を防ぐ方法や、コンクリートの性能診断など、さまざまなテーマに取り組んでいます。

塩害やアルカリシリカ反応が、コンクリートにダメージを与える

⼈間と同様、コンクリートにも寿命があります。⼀般の構造物で50年、空港など重要なインフラで100〜150年とされますが、15〜20年で劣化が目⽴つケースもあります。
劣化の要因となるのが、コンクリートの"病気"です。「塩害」「中性化」「アルカリシリカ反応」などがあり、それぞれで原因が異なります。これらを予防したり、あるいは劣化してしまったコンクリートの回復⼿段を考えるのが、私の第⼀のテーマです。
塩害とは、⻑い年⽉の間にコンクリート内に塩分が侵⼊し、鉄筋を錆びさせてしまう現象です。コンクリート内部には、⼩さな孔がたくさん空いています。この孔に塩分が⼊ってしまうのです。緻密に造れば孔を減らすことはできますが、これだけ広範に使われる建材を、全ての建設現場で緻密に造ろうとしても、限界があります。同様に、コンクリートの中の孔に⼊った⽔分が凍り、コンクリートを割ってしまう凍害という現象もあります。
アルカリシリカ反応とは、コンクリート内に含まれる⽯のある種の成分が膨張し、コンクリートを損傷する現象のこと。コンクリートにとって大変厄介な存在です。数々の"病気"を防ぎ、健康を維持するには、“予防”や"診断"が⽋かせません。

表面含浸材でコーティング。腐食とアルカリシリカ反応をダブルで防ぐ

原因が、塩分や水、空気なら、それらが侵入できないようにコンクリート表面をコーティングすればいいのです。実際、ビルやマンションなどでは、外壁塗装を行うのが一般的です。しかし橋梁やダムなどの土木分野では、これまであまり塗料を使いませんでした。建設物が大規模でコストがかかる、という理由もありますが、それ以上に大きいのが、コンクリート表面が見えなくなることです。ひび割れなどの損傷部位が塗装で隠れてしまうと、適切なメンテナンスができません。
そこで、表面含浸材を試してみました。10年前くらいに登場した薬剤で、塗っても透明なのが特徴。薬剤が表面からコンクリートの奥の方までしみ込みますが、表面上は全く変わらないため、ひび割れもすぐに発見できます。基は亜硝酸リチウムですが、亜硝酸は肉やワインの防腐剤としても使用されており、環境負荷の心配はほとんどありません。
今はコンクリートの試験体に塗って、塗装量と効果の持続年数の相関を調べています。やってみると、確かに鉄筋の錆びはかなり遅くなるようです。またアルカリシリカ反応も防いでくれます。腐食とアルカリシリカ反応をダブルで防げるのなら、使用する価値はありそうです。

コンクリートの試験体に
表面含浸材を塗布しています
表面含浸材の浸透量の分析も
学生たちが行っています

コンクリートのひび割れは一定でない。原因や性質を診断することが大事

既に完成したコンクリート構造物の診断についても研究しています。
コンクリートにひび割れが発生すると、雨や塩分などの侵入口になりかねません。このひび割れというのは一定でなく、冬は大きく、夏は小さくなったりします。1日のうちでも、朝と昼で変化します。補修する場合、ひび割れが小さくなったタイミングで行っても、その後大きくなった時にまたひび割れてしまいます。さらにアルカリシリカ反応によるひび割れの場合、ふさぐだけの補修では効果がありません。正しいメンテナンスを行うには、ひび割れを診断して原因を知り、性質を理解する必要があるのです。
もう一つ、海水を利用したコンクリートについても研究しています。海水は鉄を腐食させるので、通常のコンクリート製造には使用できません。しかし海水の成分は、コンクリートの凝固を早め、気密性を高めるという特徴も持っています。問題は鉄筋なので、錆びない鉄筋を使えばいいのではないでしょうか。世界は日本のように真水に恵まれた国ばかりではありません。海外のインフラ整備に役立てるなら、研究を進める価値はあるでしょう。
今後も研究を深め、コンクリート構造物の新たな可能性を追究したいと思います。

測定器を用いて、コンクリートのひび割れを
診断している様子