電気システム工学科
池田 雅弘
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
- ○熱・流体工学ならびに熱エネルギーシステム工学
- 【担当科目】
- 熱力学A/B 、 伝熱工学 、 エネルギー変換 、 エネルギー工学 、 実践基礎A/B/C/D 、 機械工学実験 など
- 【研究テーマ】
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1.界面活性剤添加溶液における熱・流動特性
2.内部熱交換型蒸留塔における省エネルギー解析
3.超臨界流体技術を用いた微粒子プロセッシング
研究紹介
池田 雅弘IKEDA Masahiro
工学部 電気システム工学科 准教授
工場やビルを「温めたり」「冷やしたり」する設備は、
まだまだコストダウンできる
PROLOGUE
「温水式床暖房」の入った住宅が増えてきました。電気やガス、灯油などで温めた温水を床下で循環させ、床全体を温めようというこの設備。床全体から暖気が上がってくるためとても温かく、便利な暖房設備ですよね。こうした、水を配管の中で循環させ、温めたり冷やしたりすることに利用する設備は、一般住宅だけでなく工場やオフィスビルなどさまざまな場所で使われています。それを熱・流体工学の面から見直し、さらなるコストダウンを実現しようとしているのが、池田先生です。
配管内の水の流れが悪いと、余分なエネルギーがかかってしまう
自動車のエンジンには「ラジエータ」と呼ばれる冷却装置が付けられています。エンジンをずっと動かしているとどんどん高温になってしまうため、ラジエータが冷たい水を放出し、パイプの中を循環させるのです。パイプを通る水がエンジンを冷やし、高温になるのを抑えます。
エンジンのラジエータも温水式床暖房も、基本の仕組みは同じですね。ある温度の水を配管に流すことで、配管の周囲にあるものを冷やす、または温める。配管を一巡りした水はもとに戻り、ポンプの圧力で再び配管の中を巡る旅に出る…。こうした熱交換の仕組みは、産業のさまざまな場面で用いられています。例えば工場やオフィスビルの冷暖房に使われたり、機械を冷却・加熱したりしているんです。
この仕組みで重要なのは、配管を巡る液体が順調に、スムーズに流れるかどうかです。途中で流れが鈍れば、その分だけ余計にポンプで圧力をかけてやらないといけません。それだけエネルギーもかかってしまいます。私は、配管内の液体がどうすればスムーズに流れるか、研究しています。
管の曲がり角や直径の異なる管で、水の抵抗がどうなるか
配管を流れる水の中に、界面活性剤という洗剤のようなものを加えます。するとまっすぐな配管では、水の流れがスムーズになることが分かっています。しかし、配管はまっすぐなものばかりではありません。途中で曲がる管もあるし、また枝分かれして直径の小さな管に行く場合もあります。その時、水の抵抗はどう変わるのか、また界面活性剤の濃度を変えたり、配管に送り出すときの温度を変えると、抵抗はどう変わるか…などを調べています。抵抗が小さければ、それだけ水はスムーズに流れる、すなわちポンプのエネルギーも小さくて済む、ということになります。
ただし、配管の中の水は、冷暖房や機械冷却・加熱に使う、すなわち「熱交換」を行うのが主な目的です。界面活性剤を加え、水はスムーズに流れるようになったけど、熱交換の効率が下がってしまった…では意味がありません。熱交換の効率は維持しながら、水の抵抗を低減させる、という最適バランスを探すのが難しいのです。
うまくいけば、熱交換システムに必要なエネルギーを数十%の単位で削減するのも可能ではないか…と学生たちと共に実験を重ねているところです。
ナノサイズの微粒子に、さまざまな機能を持たせるには?
「ナノサイズの微粒子にコーティングを施す」というテーマにも取り組んでいます。例えば、微粒子(薬剤)にガン細胞をやっつける成分があるとします。しかしこの成分は、正常細胞にもダメージを与えてしまうので、正常細胞は素通りし、ガン細胞にだけ届けるようにしたい。この場合、成分の表面を、ガン細胞にだけ取り付くように工夫したコートで覆ってしまえば良いのです。
しかし、ナノサイズという極小の微粒子は粒子同士がくっつきやすく、一粒ずつコーティングするのは大変です。そこで私は、超臨界流体技術を応用しました。超臨界流体とは、気体と液体の両方の性質を持っており、コーティングする物質を溶かす溶媒として用います。圧力と温度をコントロールすることで物質を溶かす能力が劇的に変化する、という超臨界流体の性質を利用すれば、一粒ごとコーティングが施せるわけです。この技術は新薬創製だけでなく、機械・電気分野の新素材開発にも役立つでしょう。
「熱交換システムにおける省エネ追究」と「超臨界流体を活用した微粒子コーティング」は、「熱・流体工学」という点で共通するものです。多彩な角度から研究に取り組み、技術の発展に貢献していきます。
私はかつて恩師から「研究者は徹底的にこだわれ。そうすれば、結果はどうあれ後悔はない」と教わりました。同じことを、学生にも伝えていこうと思います。