電子情報工学科
前田 康治
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
-
○医用機器学
○医用工学
○生体計測装置学
- 【担当科目】
- 医用機器学概論 、 医用治療機器学 、 生体計測装置学 、 医用機器安全管理学実習 、 臨床実習 、 医用治療機器学実習 、 生体機能代行装置学実習 、 生体計測装置学実習 、 医用材料工学 、 物性工学 ほか
- 【研究テーマ】
-
1.医用機器の保守・管理手法に関する研究
2.睡眠時の心電図R-R間隔変動を用いた睡眠の質の新しい評価手法の研究
- 【ひとこと】
好奇心旺盛で広い視野を持った医療従事者になって欲しい。学生時代は様々な事に興味を持ってチャレンジして下さい。
研究紹介
前田 康治MAEDA Koji
工学部 電子情報工学科 准教授
心臓のドキドキを解析すると、
メンタルコントロールにも活用できる?
PROLOGUE
映画やテレビで怖いシーンを見ると、心臓がドキドキしますよね。大事な試験の前とか、好きな人とばったり会ったときも、ドキドキする人は多いはず。誰もが経験するこのドキドキを精密に調べると、人の感じるストレスや緊張といった精神的・身体的な負荷を数値化できるのではないか、と研究しているのが前田先生です。「心拍数の変化を知ることで、自分のメンタルをコントロールしたり、日常の健康管理にも適用できると考えています」と、先生は期待を寄せています。
心拍変動を解析し、いつ、どんなストレスが発生したか推測する
人は緊張したりストレスを感じると、心拍数が変化します。逆にリラックス状態になると、心拍数は通常に戻ります。この心拍変動を数値化して、定量的に評価すると、いろんなことに使えるのではないかと、大阪電気通信大学の先生と共同研究を始めています。
心拍数解析の手法はいろいろあるのですが、私たちが進めるトーン・エントロピー法は、計測精度の高さに特徴があります。また、トーン・エントロピー法は行動中でも計測可能で、活動中のどの時点から変化が大きくなるか、といった時間的変化がわかるため、何にストレスを感じ、体内の心臓自律神経系活動がどう反応しているのか、などが推定できそうです。
私たちは心拍変動解析を用いて、人工透析中に血圧が低下しそうな患者さんを事前に把握できるのではないかと期待しているのです。
心拍変動からストレスの大きさを自覚し、メンタルをコントロール
一般に、若年層は心臓自律神経系活動が強めで、年齢を経るごとに低くなっていきます。心拍変動解析の結果をこの傾向をあてはめれば、自分の体が今、何歳くらいの状態かわかります。日常的に運動している50代の人の心拍変動は、40代に近い値を示します。反対に運動不足で肥満気味だと、数値は60代に近くなります。
これを応用すると、自分の健康を維持・管理する指標としても使えそうです。ジムに通っても体重が減らないと不安になるものですが、心拍変動で改善傾向が見られたら「もっとがんばろう」とモチベーションが上がるでしょう。
心拍変動解析によって、運動習慣のある人とない人を比較したときの、心臓自律神経系活動の働き方の違いも見えてくるかもしれません。それがわかってくれば、何らかのプレッシャーを感じたとき、体を動かし心臓自律神経系活動に働きかけてストレスを意図的に軽減できるようになる可能性があります。日常的に心拍変動の値を測定・管理することでストレスの大きさを自覚し「今日はストレス気味だから30分ウォーキングする!」といった積極的なメンタルコントロールもできるのではないでしょうか。
さまざまな課題を解決したいと考え、心拍変動解析を進めています。
医療現場で役立つ技術の提案や、デバイスの試作にも取り組む
医療や日常生活に関する技術提案やデバイス試作も行っています。
あるゼミ学生は「錠剤を自動で取り出す器具」に取り組んでいます。実はその学生自身が、数種類の薬を服用していたのです。1個2個ならともかく、毎食後、複数種となると、一週間分の錠剤を袋から押し出すのも大変な作業になります。数万円も出せばそうした機械も購入できますが、もっと安価で自作できないか、とチャレンジしています。
また、人工呼吸器による呼吸と生理的呼吸の違いを可視化したい、と研究する学生もいます。教材用人形はありますが高価なので、「もっと気軽に、中学生・高校生向けの模擬授業でも使えるようなものにしたい」とマネキンを使ってあれこれ工夫しています。
このように、学生のアイデアがきっかけとなって「じゃあ作ってみるか」となることも多いですね。昨年は、電気メスの動作を確認する専用のチェッカーが壊れたので買い替えようとしたが、数十万円もする。じゃあ手近な機材を工夫して自作してみよう、ということもありました。
医療現場の困りごとを、工学的・科学的な見地から解決する。これも臨床工学技士の醍醐味の一つです。そういった視点の持てる人材を育てていきたいですね。