電子情報工学科
升井 義博
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○LSI設計
○電子回路
○信号処理
- 【担当科目】
- 基礎電気回路I 、 電子回路 、 アナログ電子回路 、 電子情報工学実験C/D
- 【研究テーマ】
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1.LSI(大規模集積回路)の設計と応用
2.超小型バイオロギング用デバイスの開発
3.エネルギーハーベストを応用したセンサの開発
- 【ひとこと】
高校生活と比較し大学生活は勉強も遊びも幅が大きく広がります。
1度きりの大学生活、やりたいと思ったことは全部やるくらいの気持ちで楽しんでください。
研究紹介
升井 義博MASUI Yoshihiro
工学部 電子情報工学科 教授
スマホの進化もIoTの発展も支える、
省電力・極小LSIを開発する。
PROLOGUE
スマートフォンやパソコンに代表されるIT機器は⾔うまでもなく、テレビやエアコン、冷蔵庫に洗濯機といった家電製品など、⾝の回りの様々な製品に搭載されているLSI(集積回路)。IT機器や家電製品を制御し、思い通りに操作するための“頭脳”と⾔っていい存在です。
このLSIをもっと便利にしようと研究を進めるのが升井先⽣。先⽣が研究するのは“消費電⼒の極めて⼩さいLSI”の設計。「究極的にはバッテリーを必要としないLSIにしたい」と先⽣は意気込んでいます。
発電用セルを搭載し、電源不要で半永久的に稼働するLSI。
LSIのサイズは、大きいもので親指の爪程度。小さいものだと小指の爪の先ほどしかありません。スマホに内蔵されているのは小型LSIで、小指の爪ほどに100億個ものトランジスタが搭載されています。5nm(ナノメートル=10億分の1m)という、ウィルスより小さいトランジスタの集まりが、スマホの高度な操作を実現しているのです。
LSIは電気で動く回路なので、当然、電源が必要です。しかし私が研究しているのは、消費電⼒の極めて⼩さい、究極的にはバッテリー無しで稼働する、極小LSIの設計なのです。
現段階では、この省電力・極小LSIを、植物工場内の温度センサや照度センサとして用いることを想定しています。工場内で植物を効率的に生産するには、温度や湿度、照度などを一定に維持しなければなりません。それも、どこで生育しても成長速度が均一になるように、いろんな箇所をセンサでモニタリングする必要があります。
そして植物工場では、光合成にLEDの光を使用します。この光を、センサに内蔵されたLSIのエネルギーとして利用すればよいのです。LSIに光発電用セルを搭載しておけば、セルの電力でLSIは活動します。バッテリも電源ケーブルも不要で、センサは半永久的に機能するわけです。
至る所に転がっているエネルギーを集めてきて活用する。
超小型LSIに搭載するレベルの発電セルでは、起こせる発電量も数マイクロワットしかありません。それでもセンサは動かせます。
植物工場のLED光のように、世の中には転用可能な、または活かされていないエネルギーがあらゆる所に転がっています。このエネルギーを集めて活用する考え方をエネルギーハーベストと言います。それぞれの場所で⽣まれるエネルギーは、電⼒にするとごく僅か。だからこそ、僅かな電力でも稼働するLSIが重要となるのです。
現在は、発電セルを搭載した省電力・超小型LSIが実際に温度センサとして機能するかどうか、植物工場を模した環境下で実験を繰り返しています。手応えはかなりいいですね。ただし、現状のLSIだと照度や湿度など複数データの測定は難しいし、測定データをタイムリーに無線で飛ばすには、電力が足りません。ある程度データを貯めておき、決まった時間に飛ばすことはできるでしょうが、できればタイムリーに飛ばしたい。さらなる省電力化をめざし、工夫を重ねています。
いろんな場所にセンサを置けば取得できなかった情報が得られる。
極小LSIをバイオロギングに使えないか、とベンチャー企業から打診を受けました。例えば魚の生態を研究するため魚にチップをつけて海に放流したいのだけど、つけられるチップはせいぜい1cmの正方形程度。しかも、魚の一生を追えるくらい稼働してほしいので、可能な限り省電力で、と。私たちの作るLSIの特徴が大いに活かせそうなので、こちらの開発も始めました。
最近ではあらゆるところで取得した情報を集めてビッグデータを形成し、これをAIで解析して、効率性や利便性の向上につなげる、といったことが様々な領域で行われています。
IoTの時代を迎え、こうした動きは加速するでしょう。ここで大事になるのが、情報を取得するためのセンサです。センサの中枢部で働くLSIがバッテリ不要となったら、電源の問題で設置しにくかった場所にも、どんどんセンサを置けるようになります。今まで取得できなかった情報がどんどん取得できるようになり、AIの精度はさらにレベルアップするでしょう。省電力・極小のオンチップ発電型LSIが、IoTの牽引役となるのではないか、と期待しています。
LSIをいっそう進化させ、時代の発展に貢献する。そのためにさらなるレベルアップを図ります。