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広島工業大学

建築デザイン学科

森 健士郎

教員紹介

森 健士郎MORI Kenjiro

環境学部 建築デザイン学科 助教

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○応用力学
○鋼構造学
○耐震工学
○合成構造
【担当科目】
建築デザイン数理基礎 、 建築材料実験 、 構造力学A 、 構造力学基礎演習 、 構造デザインA 、 構造デザイン演習 、 BIM実習
【研究テーマ】
1.震災鉄骨建物の修復性評価法・設計法に関する研究
2.自然素材を活用した合成構造の開発と力学モデルの解明
3.鉄骨部材の損傷時発熱特性を応用した損傷評価システムの開発
4.鉄骨構造の接合部の簡易化をめざした研究
【ひとこと】

建築物は様々な分野の知識や経験の集合で成り立っています。建築学を中心としながらも周辺分野とコラボレーションしていくことが重要になってきます。

理論・解析・実験を通して、モノづくりの楽しさと可能性の大きさを体験しながら、一緒に未来を創っていきましょう。

研究紹介

森 健士郎MORI Kenjiro

環境学部 建築デザイン学科 助教

地震の損傷箇所を「熱」で測る。
頑丈な建物を「土」と鉄骨で作る
PROLOGUE

地震大国の日本は、度々大きな地震に見舞われます。その影響で、建物の一部が壊れたり倒壊してしまったりします。ダメージを受けた建物はすぐ修復しないと、安心して利用できません。このような、震災によって壊れた建築部材の修復設計法に取り組んでいるのが森先生。加えて、建物部材の損傷度を「熱」によって診断する方法や、構造部材として「土」を使った建築物の開発など、建築技術に関する多様な研究を進めています。

地震による鋼材の損傷を克服する、様々な補修法を考案

地震により、鉄骨の建物も損傷を受けることがあります。その鉄骨部材の壊れ方にもいろいろあるのですが、私は、梁や柱が押しつぶされたように曲がる「局部座屈」という損傷についての補修法を考察しています。
局部座屈を起こした箇所には、それ以上変形しないよう周囲を板で囲う、という補修法があります。しかし、建物内部の部材への補修を行うには、作業のため壁をとっぱらわないといけない、などいろんな制約があります。補修箇所が高層ビルの上階だと、作業がさらに困難です。
そこで私は「補修材を分割する」方法を考えました。性能が変わらないのであれば、補修材を分割して小さくした方が、とっぱらう壁の面積も抑えられ、作業がしやすくなります。また、損傷箇所よりも弱い部分を意図的に設ける「引き算」型の補修法も検討しました。
他に、3次元スキャナや3Dプリンタを活用した、デジタル・ファブリケーション補修という方法もあります。これだと、複雑な形状の補修に対応できますし、人間が入れないような狭い場所でも、ロボットを使って作業させることが可能です。このように補修方法のメニューを増やせば、状況に合ったやり方を選択できるでしょう。

実地試験やシミュレーションで
建築部材に関する情報を蓄積
局部座屈の箇所を板で囲う従来の補修法
損傷箇所を囲う板を分割した補修法

「塑性発熱」に着目し、部材損傷のより精密な測定に貢献

補修の前には、どの程度ダメージを受けてしまったか診断しなければなりません。私は「熱」に着目した診断方法にも取り組んでいます。
針金を両手で持ってグリグリ曲げると、そこが熱を持ち始め、やがてポッキリと折れますよね。これは「塑性化」という現象です。塑性化する時、エネルギーは熱に変換されて放出されるので、曲がる箇所が熱くなるのです。この「塑性発熱」を測ることで、部材の損傷度を推定できるのではないか、と考えました。
実際に鉄骨の試験体で試したところ、損傷を受けた箇所の温度が上昇していることが確認できました。精度面ではまだまだですが、意図通りに測定できそう、という手応えはつかめています。
建物の損傷箇所を測る手段には、加速度や変形量、歪みを見る方法があります。これらに加えて、エネルギーと直接結びつく熱で測定できるようになれば、損傷の判定がより精密になるでしょう。また、部材の周囲にあらかじめ熱測定用デバイスを組み込んでおけば、損傷がどのタイミングで起こったか、などもわかるようになります。これは、地震によって受けるダメージの有り様の解明にもつながるのではないか、と期待しています。

塑性化を起こした部材が発熱する様子
実際に試験体を建てて
地震のダメージを与え、
損傷箇所の熱を測定

土と鉄骨を組み合わせた、自然に優しい建物の建築に着手

ビルなどは、鉄骨やコンクリートなどで作るのが一般的です。しかし建物が古くなって解体した後の材料は、どうリサイクルするか、という問題が残ります。産業廃棄物として捨てられてしまうケースも少なくありません。そこで、自然素材である「土」と鉄を組み合わせて建築物を作る、という研究も進めています。
土で頑丈な建物が作れるのか?と不安に思うかもしれませんが、川などの自然堤防では、土が氾濫を抑える役割を果たしています。また、土で構造物を構成する「版築」という技術は、古来から用いられてきました。決して土が弱いわけではないのです。鉄と組み合わせれば、より強度が高く柔軟な構造躯体となるのではないか、と考えています。
実験してみると、構造性能に問題ないことがわかりました。そこで実際に建ててみようと、北海道で版築-鉄骨の合成ユニットによる試験建物の建築が始まっています。場所を北海道に選んだのは、冬に土が凍るからです。土の中の凍った水分が春になると溶け出し、土の部分に隙間を作ります。それが躯体に与える影響を見ようとしています。
損傷箇所の治し方や測り方、また新たな部材の可能性など、建築に関して様々なテーマに取り組んでいます。それぞれをさらに進めることで、建築全体の向上に貢献していきたいですね。

土を固め、鉄で補強した建材を使って、
北海道で試験建物を建築中