建築デザイン学科
杉田 宗
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○コンピュテーショナルデザイン
○デジタルファブリケーション
- 【担当科目】
- コンピュテーショナルデザイン 、 デジタルファブリケーション実習 、 BIM実習
- 【研究テーマ】
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1.情報技術を用いた新しい建築やものづくりの手法に関する研究
2.デジタル加工機を使ったデジタルファブリケーションに関する研究
3.コンピュテーショナルデザインやデジタルファブリケーションによる建築の設計
- 【ひとこと】
情報技術の発展により、建築やものづくりにも大きな変化が起き始めています。
今後は伝統的な技術と最先端のツールをつなげる人材がさまざまな分野で必要になってきます。いろいろな活動を通して、世界で活躍できる場を一緒に見つけましょう。
研究紹介
杉田 宗SUGITA So
環境学部 建築デザイン学科 准教授
“オリジナルな建築”をシステムがサポート。
デジタルデザインで建築が⾰新する。
PROLOGUE
例えば戸建ての住宅を建てる場合。最初に建築デザイナーがイメージ図のようなものを作り、関係者と合意したら次にCADなどを使って図面を作成し、以降は図面を基にあれこれ打ち合わせ…というのが、従来の建築の流れでした。実際にその住宅に暮らす人は素人なので、図面を見てもちんぷんかんぷん。実際の家が建つまでわからないのも、よくあるケースです。こういった建築の流れが今、大きく変わっていると語るのが杉田先生。「“デジタルデザイン”の登場により、建築の変革は加速するでしょう」と先生は言います。
こんなものが作りたいというイメージを、システムが具体化してくれる。
写真Aは、ゼミの学生が製作したランプシェードです。ユニークな形状をしているでしょう? しかし注目すべきは、形状ではありません。このランプシェードのデザインや設計は、人間ではなくコンピュータ内のシステムが行っているのです。
ある製作者がランプシェードを作りたいと思ったら、システムがいくつかのデザインパターンを提案してくれます。自分の好みに近いものを選択すると、結果からシステムが製作者の好みを予測し、選択肢を絞り込みます。具体的なイメージができあがってOKボタンを押せば、システムが加工に必要な設計データを自動生成してくれるのです。本学科には、部材を精密に加工するためのレーザカッターやNC加工機、3Dプリンタもあります。システムが生成したデータは、加工機にそのまま渡せますので、部材加工も自動。後はできた部材を組み立てれば、他のどこにもない、自分だけのランプシェードが完成。
これがデジタルデザインの流れです。「オリジナルな物が作りたい」と思っても、設計図面に落とし、加工用データを作成するのは、素人には困難でしょう。その部分を、システムがサポートするのです。しかも、膨大にかかっていたプロセスを削減しながら。デジタルデザインが今後、建築関連分野の主流となるのは間違いありません。
デザインも、設計も、構造計算も、全てシステムが担ってくれる。
デジタルデザインは「設計データを自動生成し、デジタル加工機と共有する」だけではありません。デザインそのものもシステムが行ってくれます。
写真Bは、木組みの間仕切りです。目線部分は木の組み方が密になって視線をさえぎりますが、上下は木組みが疎になって、開放感を生み出します。この間仕切りのデザインは、システムが自動で行ったもの。人間は大まかなサイズ感や好み、「ここは密に」といったある程度の指定をしただけです。同じデザインを人間が一からやると、時間が10倍はかかるのではないでしょうか。
しかもこの間仕切りに、設計図はありません。システムが組み上げたモデルは、そのまま加工データとして利用できます。デザイン、設計、構造計算、加工…全工程にかかっていた人間の負担を大幅に削減しつつ、オリジナルな建築が実現できるわけです。次はこの木組みを使って、階段を作ろうとしています。階段となると強度計算が必要ですが、それもシステムが自動で行います。
デジタルデザインが、建築における時間と手間のムダを削減。
建築分野には今、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)という技術が導入されています。これは建築物の3次元モデルをデジタルで作成し、そのモデルを基にしたデータで、建築設計や構造計算、設備設計、さらには建築コスト計算や建築後の保守まで一元的に運用しようというもの。最初に3次元モデルが示した通りの建築物が完成するため、技術者だけでなく建築の顧客などもイメージが湧きやすくなります。
本学科では、このBIMを2年次に学びます。しかもコンピュータ上の学びだけでなく、NC加工機やレーザカッターで実製作まで行うため、的確にデジタルデザインの概念を習得できるわけです。
情報工学科の先生と連携し、BIMデータをロボットに応用する研究も始めました。例えば建築データをお掃除ロボットなどに渡せば、施設の維持管理コストはグッと下がるはず。そういう応用ができるのも、デジタルデータの長所でしょう。
デジタルデザインは、建築のあらゆるプロセスに発生していたムダを削減するだけでなく、木材などの資源加工の際に発生するムダも極限まで減らしてくれます。SDGsの掲げる「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任つかう責任」という目標を達成するためにも、必要なのです。