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広島工業大学

食健康科学科

畠中 和久

教員紹介

畠中 和久HATAKENAKA Kazuhisa

環境学部 食健康科学科 教授

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○食品製造学
○食品工学
○商品開発
【担当科目】
食品工学 、 食品分析学 、 マーケティング論
【研究テーマ】
1.食品製造における工学的アプローチ
2.食品乾燥のメカニズム
3.商品開発プロセスと経営工学
【ひとこと】

食品工場において研究開発、マーケティング、品質保証を歴任した経験を活かし、食品メーカーの技術者に必要な科学的基礎知識と新商品開発に必要なマーケティング手法を会得した即戦力となれるよう、一緒に勉強していきましょう。

研究紹介

畠中 和久HATAKENAKA Kazuhisa

環境学部 食健康科学科 教授

味噌汁、丼にとどまらず、アイス、フルーツまで?
⾷のあり⽅を変えた“フリーズドライ”。
PROLOGUE

お湯を注ぐだけで、調理したてのような風味溢れる美味しいお味噌汁ができあがる。そんなインスタント味噌汁を作るのに⽋かせないのが「フリーズドライ」製法です。畠中先⽣は、⾷品メーカーの開発者としてフリーズドライ製法と⻑年向き合い、多くの⾷品を世に送り出してきました。味噌汁・スープ類、パスタ、丼もの、ベビーフードまで、様々な⾷品に利⽤されているフリーズドライ。この技術を多方面に活用して多くの人々に役立ててもらおうと、先生と学生たちは、フリーズドライによる新たな食品・製品づくりに挑戦しています。

栄養素も美味しさもそのまま保存。フリーズドライは理想的な保存技術。

フリーズドライでは、調理した⾷品を-30〜-35℃の超低温で凍結させた後、真空下で乾燥させます。⽔分は温度によって通常、氷(固体)→⽔(液体)→⽔蒸気(気体)と状態変化しますが、凍結後に真空という超低圧状態になると、氷は⽔の状態を⾶び越えて⽔蒸気へ“昇華”し、⾷品中から抜けていきます。氷がなくなった箇所は空洞のまま。そしてお湯を注いだ時、空洞に⽔分が浸透して、⾷品は⼀気に元の状態を取り戻すのです。これがフリーズドライ製法の概要です。
栄養が維持でき、元の⾷品の風味、⾷感を⼤きく損ねることもない。加えて、常温での⻑期保存が可能という、理想的な保存法なのです。
フリーズドライによってインスタント⾷品を作る場合、元の⾷品の材料や調味料、調理⽅法に合わせて、細かな調整が必要になります。私は⻑年、⾷品メーカーでフリーズドライ⾷品の開発に携わってきましたが、試⾏錯誤の連続でした。
例えば、味噌汁の場合。味噌には塩分と糖分が含まれます。塩分は-20℃近くで凍るのですが、糖分は-40℃を超えても凍らないことがあります。両⽅を完全に凍結させるには、味噌成分の徹底的な吟味が必要でした。

フリーズドライの試作機を活用し、様々な食品や素材について実験しています。

ポイントは凍結「温度」と「スピード」。この⼆⼤条件の管理が難しい。

凍結速度も重要です。ゆっくり凍らせると、氷の結晶は⼤きく育ちます。乾燥させて氷分を⾶ばした後の空洞が⼤きくなるため、お湯はしみこみやすくなりますが、ボロボロ崩れる恐れがあります。逆に早く凍らせると、空洞が細かくなってお湯が⼗分染み込まず、元の状態に復元できません。凍結させる「温度」と「スピード」。この⼆⼤条件を⾷品ごとに調整しないといけないのです。
本学科には、高性能のフリーズドライ試作機が導⼊されています。これを使って、学生たちと新たな可能性を追求しようと、アイスクリームのフリーズドライにチャレンジしました。
例えば介護の現場で、アイスクリームは施設に入所する高齢者から大人気の食品です。しかし冷たいアイスを食べると、体調を壊す高齢者もいます。そこで、アイスをフリーズドライにすればいいのではないかと考えました。
ところが、思った通りにいきません。乾燥はできるけど歯にくっつき、食べにくいのです。これではアイスと言えない。実際は冷たくできないのだけど、何とかアイスらしいひんやり食感を実現したい。結局、アイスに配合する素材を変更し、特殊な糖を加えてフリーズドライ用のアイスに作り直すことで実現しました。私も食べてみましたが、冷たくないのにひんやりして、アイスらしい口溶けもあり、これなら嚥下障害のある高齢者でも安心して食べられる、という手応えを得ました。

発想次第でフリーズドライの可能性は、どんどん広がる。

最近、研究を進めているのはフルーツです。レモンなどを輪切りにしたものは、風味を残したままフリーズドライできました。しかしフサのままのミカンは難しいですね。フサが水の蒸発を邪魔して、うまくいきません。と言って、むいてしまっては面白くない。何とかフサのある状態でフリーズドライにできないか、冷凍条件を変え試作しています。
アイスの例からもわかるように、フリーズドライは単なる新食品の誕生だけでなく、介護食を充実させるのに一役買うという特徴があります。また長期保存が可能で、防災用備蓄食にも活用できます。5年、10年でも腐らず、風味豊かに食べられるフリーズドライ食品は、被災した方々の心と体を癒やすでしょう。介護・防災の面でも、フリーズドライの重要度は増していくと思います。
培ってきたフリーズドライの技術と食品工学の知識を基盤として、様々な分野に⼤胆に挑戦していきたい。⽣花のフリーズドライなど、食品以外の分野にも取り組んでみたいと思います。

特殊な糖を加えることでアイスの
フリーズドライも可能に。
様々な食材のフリーズドライに
チャレンジしています。