食健康科学科
長﨑 浩爾
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
-
○健康科学
○運動生理学
○バイオメカニクス
- 【担当科目】
- 身体の発育発達と栄養 、 解剖学 、 データ解析 など
- 【研究テーマ】
-
1.代謝異常に対する適切な運動処方
2.ロコモティブシンドロームに対する適切な運動処方
3.食品の機能が身体に与える効果
- 【ひとこと】
今の時間を大切にしていろいろなことにチャレンジしてください!もし、失敗したと思っても落ち込むことはありません。人間万事塞翁が馬。何が起こるかわかりません。
研究紹介
長﨑 浩爾NAGASAKI Koji
環境学部 食健康科学科 教授
食後に高くなった血糖値を速やかに下げるには、軽度の運動が効果的
PROLOGUE
暑い季節。キンキンに冷えたコーラをグイッとひと飲みすると、ノドをシュワッと刺激して、たまらないですよね。爽快感が欲しくて、1日に何本もコーラを飲む、なんて人もいるかもしれません。でも、気持ちいいからと言って、ジュースやコーラをどんどん飲んでしまうのは考えもの。ダイエットに良くないから?それもあるかも知れませんが、「ジュースやコーラに入っている砂糖が悪さをします。そういう食生活を繰り返していると、血管にダメージを与える可能性があります」と長﨑先生は言います。
飲食後の急激な血糖値上昇は、血管にダメージを与える可能性がある
健康な人の血糖値は、食後でも140 mg/dlを上回ることはなかなかないと言われます。そこで私のゼミでは、空腹状態の学生に糖分を含む飲料を飲んでもらい、その後、血糖値の変化を観察しました。すると「上回らない」とされる140 mg/dlを簡単に超え180 mg/dl、時には200 mg/dl近くまで上がった学生もいたのです。もちろん、飲料を飲んでから2時間程度で140 mg/dlを下回り、通常レベルに戻っていました。食後に血糖値が急激に上がって1~2時間かけて元の値に戻っていく現象は「血糖値スパイク」と呼ばれます。
この食後、一時的に血糖値140 mg/dlを突破する「血糖値スパイク」は、気がついていないだけで誰もが日常的に経験しているかもしれません。血糖値の急上昇は、血管にダメージを与えます。通常は健康に影響のないレベルですが、繰り返していると、いつの間にか糖尿病の前段階である耐糖能異常になる可能性があります。上がった血糖値はなるべく速やかに落とす方が良いのです。
5分程度のゆっくりしたスクワットが、血糖値を元に戻してくれる
特定保健用食品、いわゆるトクホの食品・飲料には、血糖値上昇を抑える難消化性デキストリンを含むものがあります。トクホのお茶もいいのですが、私たちはお金をかけず、気軽にできる予防策はないか、と考えました。
それがスクワットです。立った状態から、4拍数える間に、太ももが床と平行になる位置までゆっくりしゃがみます。今度は、同じ4拍で立ち上がり、もとの状態に戻ります。この往復の動作を1回として、10回行います。少し休んでまた10回…と、3セット繰り返すのです。すると、何もしない場合と比較して、速やかに血糖値が下がりました。食後に軽度の運動をすることで、食後に上がった血糖値を下げる効果が期待できます。
そしてこのスクワットを2倍の遅さ(運動効果は強くなる)でやってみると、血糖値はさらに下がり、食後1時間までは通常のスクワットの場合より、血糖値が低く抑えられました。しかし1時間半後、血糖値は若干上昇して同じ程度になりました。強い運動ならいいわけではなく、毎日、毎食、継続するという観点からも、ほどほどが良さそうです。
ハンバーガーとパン、血糖値上昇を抑えられるのはどっち?
「糖質だけを摂った場合」と、「糖質に脂質を合わせて摂った場合」で、血糖値の上昇を比較するという研究に取り組んだ学生もいます。「糖質だけ」はパン。「糖質+脂質」の代表選手には、学生もよく食べるハンバーガーを選びました。
それぞれを食べた後、食後血糖値を15分おきに測ります。するとハンバーガーの方が血糖値は大きくは上がらない、という結果が出ました。パンの場合と比べ、血糖値上昇が約18%抑えられました。要因を調べてみると、糖質と脂質を同時に食べた場合、糖の筋への取り込みを促すインスリンの分泌が促進されるため、血糖値上昇が抑えられることがわかりました。確定的には言えませんが、脂肪がインスリンの分泌を促進するようです。だからと言って「ハンバーガーばかり食べていれば血糖値に良い」というわけではありません。口から入った脂肪は、脂肪として身体につきます。そして食べ過ぎると太ります!食事はあくまでバランス良く、というのが大事です。
食は生活において欠かせない習慣ですが、食べた後どうなるのか、そして食べ物を作る者としては、身体への影響を考えるのも重要です。健康的な生活を送るため、どのような食品、食習慣そして運動が必要なのか、いろんな角度から研究していきたいと思います。