地球環境学科
伊藤 征嗣
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
-
○リモートセンシング
○画像処理
○パターン認識
- 【担当科目】
- AI・データサイエンス入門 、 情報処理基礎A/B 、 画像処理工学 、 プログラミングⅠ 、 環境情報処理B 、 環境情報処理演習 、 環境解析演習
- 【研究テーマ】
- 1.リモートセンシング画像処理に関する研究
- 【ひとこと】
何事にも楽しく一生懸命に!
研究紹介
伊藤 征嗣ITOH Seiji
環境学部 地球環境学科 准教授
ドローンによるリモートセンシングとAIの活用で、
海浜植物の保全に貢献
PROLOGUE
海岸の近くに生育する海浜植物たち。その植物の根や葉は砂をしっかりと支え、海岸を維持する役割を果たしています。ところが近年の海岸減少に伴い、海浜植物たちの生息の場もどんどん少なくなっている、というのです。そこで、他の先生方とも協力し、海浜植物の保全に貢献しようと研究しているのが伊藤先生。先生はリモートセンシングの技術を使って、海浜植物の植生図作成に取り組んでいます。ここで活躍しているのが、ドローンとAIの連携です。
ドローンにより海岸を撮影。その画像をAIで自動認識させる
日本中の海岸に生息する海浜植物の数が、どんどん減っています。海浜植物を保全するためには、現在どういった生育状況にあるのか、実態を調査しなければなりません。
これまで、海浜植物の植生図作成は現地調査による地道な調査で作図していました。この現地調査による作図も非常に大切なのですが、ドローンで撮影した画像から目視判読して作図する方法も増えてきており、現地調査よりもはるかに広域な植生図を作図することができるようになってきました。しかし、現場は何種類もの植物が生育しているのが常なので、それをドローンから目視判読するのは大変な手間です。
私は、リモートセンシングの技術を使って、海浜植物の植生図を自動作成できないかと考えました。ドローンによって海岸を撮影します。その画像データを、ディープラーニングによってAIに自動判読させます。そして、自動判読した結果に基づいて植生図を作る…という流れです。
私はゼミ生と共に山口県の虹ヶ浜海岸にて、ドローンを飛ばしてデータを収集しました。そのデータをAIに自動分類させてみると、70~80%の精度で植生図を作ることに成功したのです。虹ケ浜に主に生育するのはハマゴウ、コウボウムギ、そして、観測時期に開花期を迎えていたハマナデシコの3種類を分類対象としましたが、広い分布を示すハマゴウ、コウボウムギに関しては、ほぼ問題なく分類できました。
汎用性の高いシステムなので、いろんな課題に活かせる
ハマナデシコは生育範囲が狭く、開花を迎え色が変化していた状況もあってか、やや分類結果がうまくいきませんでした。ディープラーニングを進めるのに十分なデータ量が揃わなかったせいかもしれません。調査を続け、取得データが蓄積されれば、開花時期であっても正確に分類できるようになるはずです。このように、植生図作成の精度をもっと高めていきたいと考えています。
通常、リモートセンシングでドローンを使用する場合、専用のセンサやカメラを搭載することも珍しくありません。しかし、私は標準装備のカメラで観測した画像から植生を解析しています。そのため、汎用性の高い解析システムの構築が期待できます。
例えば、広島の中山間地域には多い棚田での、イネの生育状況をモニタリングする、といったケースが考えられるでしょう。モニタリングによってイネの生育状況を容易に把握することができれば、棚田を上り下りする農家の方々の負担を軽減するシステムになってくれそうです。また台風や大雨、あるいは害虫被害を受けたとき、収穫量を推定することにも使えるかもしれません。実は現在このような研究にも着手し始めており、まずはイネの生育状況を定期的に観測してドローン画像データを収集している段階です。このように、さまざまな土地でドローンを観測して、環境や人々の暮らしに役立つシステムを構築していきたいと考えています。