広島工業大学

  1. 大学紹介
  2. 学部・大学院
  3. キャンパスライフ
  4. 就職・資格
  5. イベント情報
  6. SNS一覧
  7. 施設紹介
  8. 2024年度以前入学生の学部・学科はこちら→

広島工業大学

地球環境学科

岡 浩平

教員紹介

岡 浩平OKA Kohei

環境学部 地球環境学科 准教授

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○保全生態学
○景観生態学
○緑化工学
【担当科目】
生態学 、 自然環境再生学 、 生物保護学 、 環境アセスメント 、 環境共生概論 、 環境共生計画演習 、 環境生物実習 など
【研究テーマ】
1.沿岸域の生物多様性の保全に関する研究
2.生態系を活用した防災・減災に関する研究
3.大規模かく乱が生態系に与える影響に関する研究
【ひとこと】

人と仲良くなるのと同じように、植物や動物と仲良くなる最初一歩は、相手の名前を覚えることです。学生生活の間に、たくさんの生き物の名前を覚えましょう。

研究紹介

岡 浩平OKA Kohei

環境学部 地球環境学科 准教授

砂にまみれて暮らす海浜植物は、
巨大津波のダメージにも負けなかった。
PROLOGUE

2011年の東日本大震災による津波は、社会に甚大な被害をもたらしました。実は津波によって傷ついたのは都市ばかりではありません。海岸の砂浜に根を張り、力強く葉を茂らせる海浜植物たちもまた、自分たちの生育環境を奪われてしまったのです。
海浜植物は大震災以前から、人間のやみくもな開発により、生存を脅かされてきました。そんな植物たちの生態を調べ、生育環境を守らなければならない。そう考える岡先生は、遠く東北にも足を運び、調査と研究を重ねています。

⼈間の開発により、⽇本の“砂浜”は年々減少している。

海岸線の⻑い⽇本には多くの砂浜が存在しています。しかしこれらは年々減少しているんです。砂浜の陸側は、⼈間が砂浜を住宅⽤や産業⽤の⼟地として利⽤するため、どんどん開発される。⼀⽅、海側からは波が押し寄せ、どんどん侵⾷される。従来は、波に削られた分を河川から流⼊した⼟砂が補っていましたが、河川のダム建設などが進んだせいで、供給量もかなり減っています。
砂浜の減少によって、ハマヒルガオなどの『海浜植物』たちは⽣育環境を奪われ、絶滅寸前に追いやられています。海浜植物は、強い風で運ばれる塩分を防ぎ、また⼤量に動く砂をかぶりながらも茎を伸ばし、葉を茂らせるという、他の植物には⾒られないユニークな特性を持っています。過酷な状況の中でも⽣き抜く術を持った海浜植物たちを、絶滅させるわけにはいきません。それが、⼈と⾃然が折り合いをつけながら調和して暮らしていく環境づくりにつながると思うんです。

学生とともに周辺の海岸に出向き、
海浜植物の実態調査を行います。

1000年に1度の自然災害も、生命の進化を閉ざすことはできない。

2011年の東日本大震災で、東北の海岸に大きな津波が押し寄せました。巨大なダメージを受け、海岸線の動植物の再生は不可能ではないか、と私は危惧し、モニタリングに向かいました。すると、想定外の状況が見えてきました。彼らは思いのほか、たくましく再生しているのです。砂浜によっては、震災翌年にもう以前と変わらないほどに植物たちが復元した所もあります。回復の遅かった所も、砂が戻ると種子が帰ってきたようで、10年経って元通りになった所が増えています。
植物の生育環境を壊す要因は、大きく2つあります。一つは今回の震災のような、自然の撹乱です。しかし、たとえ1000年に一度の大津波であろうと、生命はそれより遥かに長い歴史の中で進化してきました。進化の過程で起こるそれらの撹乱に耐えたものが、現在生き残っているわけです。自然の撹乱は生物の遺伝子に織り込み済みなので、元に戻ることができるのです。
しかしもう一つの要因である人為的な撹乱は、そうはいきません。津波を教訓に、人間は巨大な防潮堤を作ったり、山の土砂を削って海岸に持ってきて盛土しています。これらが海浜植物にとって、津波以上に深刻な生育環境の破壊になるのです。同じ土砂でも海のものと山のものでは、性質がまるで異なりますから。そしてそれは結果的に、災害に対するもろさにつながりかねません。

自然の回復力を活用する、というグリーンインフラの発想が不可欠。

コンクリートの防潮堤はいかに強固であっても、いつかは壊れるので、作り直さないといけません。一方、自然の生態系は、ダメージを受けても自ら回復する力=レジリエンスがあります。人工的な防災対策も大事ですが、もともとその地域にある天然の生物を上手に活用すれば、防災効果は遥かにアップするのです。
実際に石川県の加賀海岸では、海浜植物をうまく防災に利用しています。海浜植物は、砂を堆積させます。それが100年くらい経過すると、15mくらいの砂丘となったのです。これはまさに天然の防潮堤です。壊れても自然に復元するので維持管理費はほとんどかかりません。そして砂丘は、希少な海浜植物が暮らせる場所にもなっています。
広島工大が面する瀬戸内海では、海浜植物だけでなく干潟に棲む生物の調査も行っています。瀬戸内の干潟はとても面白く、少し調査しただけで100種類以上の生物が発見できます。中には絶滅危惧種なども。これら干潟の生物は海を浄化する働きがあります。
このように人と自然が調和し、その恩恵をうまく活用するグリーンインフラの発想が、これからは必要じゃないでしょうか。

東日本大震災の津波でダメージを受けた
東北の海岸線に生えていた海浜植物。
震災後も再生していました。
ハマヒルガオ。海浜に育ち、
可憐な花を咲かせます。