情報工学科
加藤 浩介
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○ソフトコンピューティング
○システム最適化
- 【担当科目】
- アルゴリズム入門 、 プログラミング入門 、 プログラミング基礎 、 HIT基礎実践A/B/C/D 、 HIT応用実践A/B/C/D 、 専門ゼミナールA/B 、 シミュレーション特論(大学院)
- 【研究テーマ】
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1.マルチエージェントシステムを用いた人工社会/人工学級シミュレーション
2.現実のスケジューリング問題に対する解法の研究
3.現実の配送計画問題に対する実用的な解法の研究
研究紹介
加藤 浩介KATOH Kosuke
情報学部 情報工学科 教授
「あいまいで、やわらかな計算⽅式」が、
イジメや差別の問題を解決する?
PROLOGUE
⼈類は⻑い間「緻密で正確な計算」を追求してきました。⾶⾏機が空を飛ぶのも、ロケットの⽉⾯着陸も、「緻密で正確な計算」を積み重ねた結果、と⾔えます。
しかし、このやり⽅では解決できない問題も増えてきました。例えば「いじめ問題」、あるいは「ヘイトスピーチ・差別問題」です。正確な計算を繰り返しても、⼈の⼼や言動が関わるものは、なかなか答えが⾒えません。こうした、複雑で予測の難しい問題を解決するため、「あいまいで、やわらかな計算⽅式」を活⽤しようというのが、加藤先⽣の研究テーマです。
不確かな状況でも判断を下す柔軟性を、システムに取り⼊れる。
⾶⾏機を⾶ばしたり⽉⾯着陸を成功させるには、正確な情報の収集と、緻密な分析・処理が欠かせません。これは「ハードコンピューティング」と呼ばれます。しかし⼈間は、常に詳細な情報が集まるのを待って判断するわけではありません。空が曇ってる、⾬が降りそう…といった、あいまいで不正確な状況でも、私たちは「傘を持って⾏こう」「⾯倒だからいいや」などと判断し、⾏動します。
あいまいで不確かな状況であっても、それなりの答えを導き出す、というやり⽅を取り⼊れたのが「ソフトコンピューティング」。これは、⼈間の思考に極めて近い⽅法と⾔えます。だから、刻々と変化する状況に対応できる柔軟性があるのです。
ソフトコンピューティングは既に、多⽅⾯で活用されています。例えば、地下鉄のスムーズな運転&省エネや、新幹線の速度アップ&省エネ、エレベータの自律的運用など、身近な領域でシステムが「⼈間らしい判断」を行っているのです。
コンピュータ上の“クラス”で、“イジメ”が発⽣する原因は?
ソフトコンピューティングの⼿法の一つであるマルチエージェントシステム(MAS)を用いた「⼈⼯学級シミュレーション」を新潟⼤学の前⽥義信先生が試みられており、共同で研究を進めています。この研究では、コンピュータ上で擬似的に学級を作ります。学級には数⼗名の「⽣徒(エージェント)」がいて、それぞれ「旅が好き」「にんじんが嫌い」などの属性をランダムに持っています。後は⽣徒たちが互いに、自律的に関わり合うようにするだけ。すると「⽣徒」たちは、⾃分と属性の近い「⽣徒」を探し、グループを作り始めます。やがて学級は数グループに分かれます。しかしどのグループにも⼊らない、孤⽴した「⽣徒」も発⽣します。その属性を⾒ると、他と共通する属性が少ない。これは、実際に学校で起こる「いじめ問題」そのものです。
現実の学級でいじめの原因を探るのは、簡単ではありません。しかし、コンピュータ上の擬似学級でシミュレーションを繰り返せば、原因究明できます。やがてイジメ問題の解決にも貢献できるのではないでしょうか。
MASで、“差別の構図”を明らかに。
最近、ヘイトスピーチや差別の問題を耳にする機会も増えました。これらの問題についてもMASで、差別の構造を明らかにしてみようと、本学科の本多康作先生と共同で取り組んでいます。仮想人物(エージェント)に社会的満足度というスコアを持たせ、またある種の属性を設定します。エージェント同士が近づいた時、属性が似ていると何もしないが、属性が異なると相手を攻撃し、相手の社会的満足度を奪う…というMASを構成します。ここに「差別」概念を設定してみるのです。なおここで「差別」概念とは、侮辱のレベルを超えた、「ある集団を劣等集団と見なせ」などといった社会的ルールの成立を背景に生じる概念です。こうしたルールをMASに組み込み、シミュレーションを実行します。すると「差別」概念がない場合、相互の攻撃はあるものの、満足度の格差はそれほど大きくなりません。しかし「差別」概念があると、エージェント間の満足度の格差が増大するのです。エージェントAがエージェントBに攻撃を繰り返したり、特定のエージェントが周囲から集中して攻撃されたり、などが重なって、満足度の格差が大きくなるようです。これはまさに「差別」が生じていると考えられるのではないでしょうか。あるルールを受け入れた人が、相手を侮辱・排除・攻撃することにより、自分の満足度を高める行為が、「差別」と考えられる状況を招くのではないか…そんな構図が見えてきます。
「差別」の構図を明らかにした上で、「差別」のない社会の実現につながるよう、研究を進めていきたいと思います。