情報マネジメント学科
酒井 達弘
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○データマイニング
○機械学習
- 【担当科目】
- データベース 、 プログラミング応用 、 ネットワークシステム設計
- 【研究テーマ】
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1.ソーシャルメディアに対する時空間データマイニング
2.データマイニングの高性能化に関する研究
- 【ひとこと】
学生のうちに、たくさん学び、たくさん遊びましょう。
研究紹介
酒井 達弘SAKAI Tatsuhiro
情報学部 情報マネジメント学科 助教
SNSに投稿された文字・画像情報を、防災や観光に活用する
PROLOGUE
情報投稿サイトのX(旧ツィッター)や、写真投稿サイトのインスタグラム、動画サイトのYouTubeなど、SNSは数億もの人々が利用しています。誰もが気軽に情報を発信し、瞬時に全世界に共有されるので、楽しく使っている人も多いでしょう。酒井先生は、膨大に集まるこれらの情報を、もっと便利に活用できないか、と研究しています。先生はデータマイニングやディープラーニングなどの技術を使って情報を整理し、「防災」や「観光」などに役立てようと考えています。
SNS情報の解析により、どこで何が起こっているか明らかにする
生活をしていて気づいたことがあれば、文字や静止画・動画で気軽に投稿し、仲間と共有できる。これがSNSの魅力です。誰もがいつでも情報発信できるため、集まる情報の数も多いし、リアルタイムの様子が分かります。
これらのSNS投稿には、位置情報「ジオタグ」がついているものも少なくありません。ジオタグがあると情報の発信場所もほぼ特定できるため、大雨や大雪、地震などの自然災害が発生した際、リアルタイムの被災状況を把握するのも可能ではないか、と考えました。
例えば、大雨が発生した時、「大雨」に関する文字情報や画像情報を抽出します。ここでは、たくさんの情報の中から目的のものだけを取り出すデータマイニングや、情報を取り出すための手法をシステムに学習させて実行するディープラーニングの技術を使います。抽出された情報は、クラスタリングによって、時間・場所・データの類似度などによって振り分け、特徴を明らかにします。そして、振り分けたデータを地図上にプロットするのです。
すると、どの地域で何の情報が発信されているか、トレンドが見えてきます。「A地域で土砂崩れ」「B 地域の人々が避難を始めた」といった被災状況が分かるので、防災対策を素早く立てられるのです。
地域の新たな観光資源の発掘にも活用できる
これは「観光」にも適用できます。基準を「観光」に設定して情報を抽出すると、どういう属性の人々が今、どこに行き、どんな観光やイベントが集まっているか、といった情報を、システムが自動的に可視化してくれます。
昨今は外国人観光客も増えていますが、彼らは地域の人が重視していない、思わぬ場所にやってきて観光を楽しんだりします。古くからその地域に暮らす人は「当地の観光と言えばここ」と定番の場所しか知らなかったりしますが、観光客はもっとアクティブで柔軟なので、定番でない場所にも面白さを見出すのです。そういった、地域の新たな観光資源の発掘につながることもある、というのが、SNS情報を活用する意義の一つと言えるでしょう。
コロナウィルスの感染拡大状況を把握するのにも、SNS情報は使えるのではないかと仮説を立て、実験してみました。すると、三大都市圏から拡大が始まり、時系列とともに地方都市圏に広がっていく様子が浮かび上がってきました。無論、これが現実の感染拡大とリンクしている、と言い切ることはできません。が、今、現実の様相をつかむ手段の一つとして、かなり有用なのではないか、と手応えを感じています。
新たな手法を取り入れ、精度をさらに向上させる
課題は、精度の向上です。「大雨」や「観光」などの基準を与える際、何をポジティブととらえ、何をネガティブと判定するか。まだ情報が膨大になればなるほど混じるノイズを、どう排除するか。このあたりをうまく処理するアルゴリズムを考えていくことで、精度はさらに上がるでしょう。
精度とともに、スピードアップも図っていきたいですね。特に防災対策に関しては、早いタイミングで正確な情報をつかむことが不可欠です。観光にしても、今発生したイベントをうまくキャッチするため、スピードは大事です。情報が増えるとスピードは落ちる、というトレードオフを解決するには、新たな手法を取り入れる必要もあると思います。
私は、従来の約10倍のスピードで結果を出せるクラスタリングのアルゴリズムを開発し、2020年、情報科学分野の国際会議において「Honorable Mention Award」を受賞しました。SNSは今も進化していて、いろんな情報が集まるようになっています。これをうまく分析・活用すると、防災や観光だけでなく、様々な分野の状況やトレンドを解析できるでしょう。これからも、基礎研究・応用研究の両面に力を入れ、SNS活用を推進していきます。