情報マネジメント学科
白石 俊輔
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○数理最適化
○意思決定論
- 【担当科目】
- マーケティング 、 ファイナンシャル・マネジメント
- 【研究テーマ】
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1.微分不可能最適化の研究
2.AHPの一対比較行列の研究
- 【ひとこと】
速くて確実な行動をお互いに心がけましょう。
世の中の信頼度が増しますので
研究紹介
白石 俊輔SHIRAISHI Shunsuke
情報学部 情報マネジメント学科 教授
カレーが好きだけど、ラーメンもお好み焼きも捨てがたい…。
こんな問題もすっきり解決できる
PROLOGUE
朝起きて、歯を磨いて、さあ今日はどの服を着ようか、と迷うことがあったりしませんか。食事をするときでも、今日はカレーにしようかラーメンか、それとも…と考え込んでしまったり。ちょっとしたことだけど、決められない。白石先生の研究は、そんな悩めるアナタがすっきり答えを見出すのに役立つかもしれません。先生が取り組んでいるのはAHPという意思決定論。選択肢が多く、優劣のつけにくい複雑な問題を、数値化して比較することで最適の選択に導きやすくするのだそうです。
複数ある選択肢をペアにして一対比較。それを数値化し、順位付けする
「好きな食べ物は何?」と聞かれたとき、たいていの人は悩んでしまうのではないでしょうか。しかし「寿司と焼肉、どちらが好き?」と尋ねられたら、「絶対に寿司」「どっちかと言えば焼肉」などと、答えやすくなるはずです。
AHPを簡単に説明すると、こういうことで、いくつもある選択肢をペアにして、一対比較を重ねて意思決定に結びつける手法です。ただし、単純にペアの優劣を決めるのではなく、比較の程度を数値化します。例えば「同じくらい」を1とするなら、「やや好き」を3、「かなり好き」は7というように。選択肢の一つひとつを数値化し、大雑把に順位付けするのです。また、評価基準の違いで数値が変わることもあるでしょう。「恋人と行くなら」「お金をかけたくないなら」など評価基準に応じた数値化と順位付けを行い、目的に応じた選択を総合的に判断するわけです。
AHPの有用性を示す事例としてよく引き合いに出されるのが、日本列島四島の大きさです。北海道と九州を比較すると、北海道が「やや」大きいですね。本州と四国を比べたら、本州の方が「絶対に」大きいでしょう。これら「やや」「絶対」といった言葉の数値化で、四島の面積比まで推定できてしまうのです。
データが途中で欠損しても、整合度を利用して穴埋めできる
複数の選択肢を比較しながら評価するとき、どこかでデータが欠損することがあります。優劣をどうしても決められなかったり、単純に忘れたり。欠損したままだとデータの信頼性が下がってしまうので、何とか穴埋めする必要があります。そこで私は、固有多項式を用いる新たな手法を発見しました。
AHPの一対比較行列を行う際、整合度という指標があります。これは選択肢が適正に並んでいるかどうかを判断するものです。「天ぷらより焼肉が好き」で「焼肉より寿司が好き」な人は「天ぷらより寿司が好き」のはずですが、うっかり「寿司より天ぷらが好き」と答えることがあります。こういうとき、整合度が悪い形で出てくるため、判断の誤りを見つけられるのです。
固有多項式によって、一対比較行列から発生する多項式の第3係数を最大化すると、整合度を最小化できることがわかりました。これを応用し、欠損データを推測できるようになったのです。この手法は、欠損はないが整合度が小さいという結果が出たとき、どの要素を変えれば整合的になるか調べる際にも使えます。他の研究者からも高く評価され、「このメソッドが世界一の性能を持つ」と紹介されました。
行政、経営、金融など、複雑な要因の絡み合う問題で効果を発揮
AHPは行政、経営、金融など、複雑な要因が絡み合い、結論を出すのが難しい分野・局面で有効に機能します。見方や発想を変え、AHPの精度をさらに高めることができないか、また別の視点から新たな整合度を提案できないか、研究を続けています。
これとは別に、ゼミではファイナンス分野の入門編として、バーチャル投資にも取り組むつもりです。今では株式データの入手は容易なので、これを基に、バーチャルで投資するのです。学生同士、選択や手法を競い合うのもいいでしょう。投資の王道は一定額の長期にわたる積立です。複数の銘柄に分け、投資額を変えずに長期間行うことで、リスクが分散され、良い結果が出やすくなります。
仮に失敗して大きな損失があったとしても、バーチャルで実際のお金は動かないので、問題はありません。卒業までに金融や投資の仕組みを体験すれば、社会に出たときに役立つのではないでしょうか。
AHPをはじめ、やってみたい研究はいろいろあります。プログラミングに強い学生がいると、シミュレーションなどがやりやすくなり、研究はさらに進むでしょう。彼らと一緒にいろんな課題にチャレンジしたいと思います。