情報システム学科
土井 章充
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
- ○デジタル信号処理
- 【担当科目】
- デジタル信号処理 、 情報理論 、 音声音響処理 、 情報工学応用実験A など
- 【研究テーマ】
-
1.多次元デジタルフィルタの設計・実現に関する研究
2.適応フィルタの設計に関する研究
3.画像処理、主として画像への電子透かしに関する研究
- 【ひとこと】
大学にいる間に「自分のセールスポイントはこれ」と言えるものを1つ以上作るよう心がけてください。
研究紹介
土井 章充DOI Akimitsu
情報学部 情報システム学科 教授
画像にも音声にも、え?動画にも?
『電子透かし』がマルチメディアをもっと便利に!
PROLOGUE
スマートフォンで撮影した画像をそのままSNSにアップして、音楽データをサイトからダウンロードし、動画をストリーミング配信で楽しむ…。多彩なエンターテインメント・コンテンツがデジタルで楽しめるようになりました。でも、その進化はまた途中段階。「『電子透かし』技術を使えばもっと便利に、また著作者や購入者の権利をきちんと保護した形で、安全に楽しめるようになりますよ」そう語るのは土井先生。でも『電子透かし』って一体、何?
デジタルコンテンツに「秘密の情報」を埋め込めば、不正コピーが防げる
画像・音楽・動画といったデジタルコンテンツの特長は、「質の劣化を最小限に抑えられる」ということ。しかしその特長が同時に弱点でもあるんです。コピーしても質が劣化しないなら、どれがオリジナルか分からなくなってしまう。途中で誰かがデータをいじって、オリジナルの作品を変えても気づかないかもしれない。これでは安心してデジタルコンテンツを楽しめませんね。
そこで活躍するのが『電子透かし』。千円札に入っている透かしのように、デジタルデータにも『透かし』情報を加え、オリジナルであることを証明するのです。誰かが改変しようとしても、透かし情報に証拠が残るので、難しくなります。
将来的には著作権者の情報だけでなく、購入者情報の埋め込みも可能でしょう。誰のデータなのか、オリジナルかコピーかがはっきりすれば、デジタルコンテンツ市場はもっと活性化すると思います。
そして『電子透かし』技術は、著作権者や購入者の権利を守る、だけではありません。デジタルコンテンツに、多彩な楽しみ方を提供するのにも活用できるのです。
『透かし』技術が、コンテンツの活用法を広げる
QRコードをスマートフォンで読み取れば、サイトにアクセスできることは知っていますね?しかし、ごく普通の写真なのに、それをスマートフォンで読み取るとサイトにアクセスできる、という画像があるのを知っていますか?
こうした画像には、実は『透かし』技術でQRコードのようなものが埋め込まれているのです。画像そのものがQRコードになるなら、自分の顔写真をに貼り、読み取ると自分のSNSにアクセスできる、なんてことが可能になります。音楽データに透かし技術でURLを埋め込み、音楽を聞き終わったらURLにアクセスさせる、といった利用法も考えられます。デジタルコンテンツに新たな楽しみ方が加わるわけです。
どうやって、デジタルコンテンツに『透かし』情報を埋め込むのか?大切なのは「もとのコンテンツの質をできるだけ落とさない」ことです。狙うのは、データが激しく変化する箇所です。画像であれば、色の変化の激しいところ。音楽なら、サビ部分など大きな音が出ている箇所。こういった部分なら、透かし情報を埋め込んでも、人はほとんど気づきません。と言っても、まだまだレベルアップが必要です。
データから必要なものだけを取り出す『デジタルフィルタ』技術も
私はもともと『デジタルフィルタ』から研究をスタートしました。デジタルフィルタとは、データに含まれた情報から邪魔なノイズを排除し、必要な情報だけを取り出す技術です。スマートフォンの音声がクリアなのは、スマートフォンに届いた音情報からフィルタが雑音を排除し、発信者の声だけを抽出しているから。音だけでなく、画像データをきれいにする際にもフィルタが用いられます。
『デジタルフィルタ』は無駄を取り除くために使う技術で、『デジタル透かし』は逆に、必要な情報を付加するために使う技術。方向性は全く逆ですが、発想は同じです。双方とも利用範囲が広いし、今後大きな発展が望めます。デジタルコンテンツをみんなが便利に、かつ安心して楽しめるよう、もっと技術の精度を高めていきたいですね。いつか、私が思いもつかなかった方面で活用されるようになるかもしれない…そう考えると、研究にも力が入りますよ。
ゼミの学生には、私が取り組む『透かし』技術や『フィルタ』技術に関するものだけでなく、マルチメディアに関わることであればどんな研究に取り組んでも良い、と伝えています。例えば「りんご」とマイクに向かって声を出すと、画像内にあるリンゴを示す、というプログラムに取り組む学生も。学生たちには、実際に形にすることの楽しさをぜひ伝えたいですね。