情報システム学科
竹野 英敏
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○感性情報学
○教育工学
○教科教育学(情報・工業・技術)
- 【担当科目】
- 情報コミュニケーション概論 、 メディア活用 、 アプリケーションデザインB 、 経営情報システムデザイン 、 情報システム管理 、 工業科教育法 、 職業指導
- 【研究テーマ】
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1.学習支援システム、ラーニングマテリアルデザイン研究
2.ウェアラブル光トポグラフィ及びアイトラッキングを用いた情報デザイン、ラーニングマテリアルデザイン評価研究
3.アイトラッキング及び自由度相対運動計測を用いた動作評価研究
- 【ひとこと】
培うスキル!時忘る気力!勝るものなし
研究紹介
竹野 英敏TAKENO Hidetoshi
情報学部 情報システム学科 教授
学習者の脳血流と視線の動きを追うことで、
教材の学習効果を測定する
PROLOGUE
竹野先生は、日本の中学生の約50%が使用する「技術・家庭」の教科書において、著作者代表を務めています。先生は「技術・家庭技術分野」の学習指導要領も作成しているほどで「ものづくり教育」のプロなのです。そんな先生が取り組むのは「ものづくりを教えるために作成されている教科書や教材は、学習効果をどの程度発揮しているか」を調べること。さまざまな機器を活用し、教材によって学生の興味はどれほど刺激されているか、科学的・客観的に測定しようとしています。
ものづくり教育において、教科書等の学習効果がどの程度あるのか測りたい
私はこれまで、多くの「技術・家庭技術分野」の教科書の編纂に関わってきました。また、大手印刷会社と組み、小学生向けのプログラミング教材も作成しています。
教科書や教材は、作って終わりではありません。児童・生徒に使用してもらい、知識・技術の習得に役立って初めて、役割を果たしたと言えます。しかし、教科書・教材の学習効果を測る手段は、多くありません。
こうした調査は通常、アンケート等の主観的調査と、生理学的調査、行動調査の3つが必要と言われます。しかし教育分野では、無記名の主観的調査にとどまっています。対象が小中学生の未成年者なので社会的制約があるのは仕方ないとしても、これでは学習効果の精緻な測定ができません。教育の質の向上を図る上でも、好ましくありません。
そこで私は、生理学的調査、行動調査を導入し、科学的・客観的に学習効果を判定したいと考えました。実際の小中学生に協力してもらうことは難しいので、成人大学生に協力してもらって研究を重ねています。いずれ教科書等の学習効果を科学的に測定しようという気運が社会的に醸成されたとき、これらの研究成果が、貢献する材料となるはずです。
脳血流とアイカメラで、学習者の興味や緊張の度合いが科学的に分かる
具体的に言うと、ある「技能」についての教科書記述の効果を明確にしたいとします。脳血流計と非接触型のアイカメラを実験対象の学生に装着した上で、例えば「やすりがけ」の作業をしてもらうのです。
脳血流計は34チャンネルで、前頭前野の血流を測定できます。やすりがけを行っている間、脳のどの部分に反応が出るか見るのです。反応が出るということは、緊張や興奮を抑制して思考しているということです。脳血流という生理学的な視点から調査ができるわけです。
アイカメラは、学生の視線がどこに停留しているかを示します。視線の動きという行動を調査することで、興味があるのか、迷っているのかといったことがわかります。
実験を行ってみると、視線と脳血流量、そして被験者の興味の度合いには相関関係があるとわかってきました。何の指導もせず、いきなりやすりがけをさせた場合、学生の視線はあちこちに動き、脳血流は低位な値を示します。一方、事前に教材等でポイントをレクチャーすると、視線の動きはかなり絞られます。自由に試行錯誤させても、慣れてくると視線は落ち着くのですが、適切な教材やレクチャーを事前に与えた方が、より早く落ち着くようです。つまり、その教材や指導に「学習効果がある」と判定できるわけです。
測定の精度を高めることで、教育の質の向上に貢献したい
ちなみに、ものづくりのプロである職人に同じ実験をしてもらっても、脳血流計はほとんど反応しませんし、視線もあちこち動きません。考えてみれば当たり前で、職人が基本動作にいちいちどぎまぎしているようでは仕事になりません。同様に、素人も最初はあまり反応が出ません。これは物事を知らないためです。ポイントを学習すると、途端に反応(思考しているサイン)が出始めますから不思議なものです。
学習効果の測定法として、脳血流計を用いた生理学的調査、アイカメラによる行動調査が有効であることは見えてきました。これにアンケートも加えると、教科書や教材がどの程度、学習効果に寄与しているか、適切に判定できるでしょう。もっと研究を重ね、「この学習、この教材、こういった指導が、効果を上げるのに有効」といったところまで持っていければ、と考えています。
製造業の現場では、部材の加工や組立を高精度で行う設備や機械が登場しているとは言え、ものづくりの品格と質を守り、支えているのは、職人たちの卓越した技能です。しかし職人たちの高齢化により、貴重な経験的な暗黙知の技能がどんどん失われつつあります。ものづくりの基盤を支える知識・技能の習得や、その質の向上という面からも貢献をしていきたいですね。