鳥人間コンテスト初出場― 自作の飛行機で空を飛ぶ! 夢に挑んだ2日間(その2)
2017.09.12
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読売テレビ主催「第40回鳥人間コンテスト2017」の夢の舞台に挑んだ広島工業大学人力飛行機同好会「HIT Sky Project」。前回は前日までの様子をお伝えしました。
鳥人間コンテスト初出場― 自作の飛行機で空を飛ぶ! 夢に挑んだ2日間(その1)
今回は、14年以上夢に描いた本番のフライトの様子をお伝えします。HIT SKY Projectの挑戦をご覧ください。
万感の思いを胸に 夢の舞台へ
晴天に恵まれた7月29日。ついに琵琶湖から飛び立つ時が来ました。メンバーとOBとで機体の「雙鶴」を移動。係員の誘導で、180メートルのプラットホームを少しずつ上っていきます。
ここまで中心となって機体製作にあたった川邊さんは「プラットホームまで上げるのも一苦労だろうな」と苦笑いしながらも「ついにここまで来ました。あとは怪我のないよう、楽しいフライトを、と操縦士に言いたいですね」と笑顔。責任者の田邉さんは「川邊さんを中心に、初めての試みに手探りで取り組んだことを忘れません」と達成感いっぱいの表情。
メンバーの思いやエールが書かれた赤いTシャツを着た城戸さんも、ガッツポーズを見せて上がっていきました。
湖面から約10メートル。やっと、やっとたどり着いたプラットホームは、選ばれたチームしか踏めない夢の舞台。メンバーの目には、どんな光景が広がっていたのでしょう。
フライト直前、「鶴のように羽ばたいてきます!」と話す操縦士の城戸さん
プラットホームの最後は登り坂。機体を支える手にも力が入ります
フライトを後押しする太鼓の響き
広島工業大学を前夜に出発した応援バス。29日朝、教職員や学生を乗せて会場に到着しました。観覧席では和太鼓サークル「鼓遊会」の13人が、HIT Sky Projectのために作ったオリジナル演目「飛翔」を披露し盛り上げます。
鼓遊会代表の藤田拓海さん(機械システム工学科3年)は「大学で同好会メンバーが一生懸命機体を組み立てているのを見ました。鳥人間コンテストはテレビでしか見たことがありませんが、彼らの飛行機が遠くまで飛び、空を翔けるよう、思いを込めて新しい演目を作りました。応援団が声を出しやすいよう工夫した自信作です」と話してくれました。
観覧席に集結した約100人の応援団は、赤い横断幕を掲げ、太鼓のリズムに合わせ「HIT!」と繰り返しました。太鼓の音はその思いを乗せ、遠いプラットホームにもしっかりと届いていました。
応援に駆け付けたのは、彼らだけではありません。
HIT Sky Project顧問の宇都宮先生に学ぶ好本史記さん(知能機械工学科3年)、永冨加菜さん(知能機械工学科2年)も、赤いオリジナルうちわを振って声援を送っていました。2人は「先生も同好会のメンバーも、ここまで一生懸命頑張っていたのを知っています。頑張って!」「パイロットの城戸さんは同じ学科。他にも知人がたくさん関わっています。怪我のないよう、思い描いたフライトをしてほしい」と話していました。
出場チームの中でも、数少ない太鼓での応援。一般来場者からは「太鼓の音は良く聞こえていいね」という声が
うちわに描かれた「雄翔」は、広島工業大学内にある彫刻家 空充秋氏の作品名。「若人が雄々しく羽ばたき巣立っていく心意気」を表したもの
全ての思いを乗せて飛んだ!
堂々の22メートル
太鼓の音と「HIT!」の掛け声で、観覧席のムードが最高潮になる中、いよいよフライトの時。城戸さんがコックピットに乗り込み、スタンバイ。「ゲート、オープン!」の合図とともに、メンバーが機体を押して飛び立ちます。
「雙鶴」はゆっくりと飛び立ち、一度は風を受けふわりと上昇。その後、バランスを崩し着水しました。結果は、22.08メートル。あまり距離は出なかったものの、無事に初フライトを終えました。
操縦士を務めた城戸さんのお父様は「プレッシャーもあったと思う。よく頑張ったね」、弟さんからは「次は自分が乗りたい!」と頼もしい発言。メンバー石飛さんのご家族は「あきらめず、ここまでよくやったと言ってあげたい。あこがれのプラットホームに立っただけで十分」とこれまでの労をねぎらいます。また製作を担当した川邊さんのお父様からは「大会直前は、帰宅できないくらい頑張っていた。本当に良い仲間に恵まれたと思います。"成し遂げた"という経験を、社会人生活でも生かし、誠実な人生を歩んでほしい」とエールを送っていました。
「送り出すとき、機体が斜めになってしまった」「機体を支える持ち手を改良しないと」「重心のバランスがとれていなかった」と反省の弁が続く同好会メンバー。ずぶ濡れになった城戸さんは「機体の能力を発揮し切れなかった。次に生かしたい」と誓います。
これが最初で最後の挑戦となった4年生の川邊さんは「運営や計画には反省点がいっぱいですが、とにかくお疲れさまでしたと言いたい。先輩たちから提示された目標"300メートル"は後輩に託します。プラットホームから飛びたてて良かった」と感慨深く語ります。
対して「風をつかんでいたよ」「最初にしては上出来」と、健闘を讃えるOBたち。少ない人数をチームワークとOBの力でカバーしたHIT Sky Projectの初挑戦は終わりました。
一度は風をつかんだところで、左に傾き始めた機体
バランスを失ったまま着水。初フライトは終わりました
HIT Sky Projectの記念すべき第一歩
初参戦を終え、プラットホームから引き上げるメンバー
引き上げられた機体をトラックに搬入し、このメンバーでは最後となったミーティング。顧問の宇都宮先生から「ここまでの経験は5年後、10年後の自分にきっと生きることと思います。しっかり勉強して帰ってください」との言葉が掛けられました。
回収された機体を全員で引き揚げました
広島工業大学の歴史に、新たな1ページを記しました
チームの中心的存在だった川邉さん(中央)
再チャレンジを誓ったミーティング
九州大学「これからも良い交流を」
数年前から積極的に交流し、技術面はもちろん、資材提供などでもお世話になっている九州大学鳥人間チーム。代表の大澤啓介さんは「今日は、かつて顔を合わせた広工大OBの人に会うことができ、懐かしく思っています。関東や関西と違い、我々は近くに鳥人間コンテストをめざすチームがあまりありません。広島工業大学さんと関わりを持つことができ、とてもうれしく思っています。同じ部門に挑むチーム同士、これからも互いに良い交流を続け、高めあえたらいいですね」と、うれしいエールを送ってくれました。
法政大学「来年、またここで会いましょう」
駐機場が隣合わせだった法政大学航空工学研究会は、2年連続19回目の出場。「強度を高めたら、次は軽量化へ、ステップアップしていってください。来年、またここで会いましょう」と言葉を交わし、固く握手。
たくさんのエールを胸に、HIT Sky Projectの挑戦は続きます。
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