カープOBのお二人が「熱い思い」を学生たちに伝える スポーツ講演会
2017.12.26
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トップアスリートの経験に学ぶ 今年は2名の野球人が講師
広島工業大学体育会本部では毎年、教育活動の一環として、スポーツ界で活躍された方を講師としてお招きし、経験談や人生観をお聞きする「スポーツ講演会」を開催しています。
今年は、広島カープOBの野村謙二郎さん、山内泰幸さんのお二人をお招きして「私の野球人生」をテーマに語っていただきました。講演会の様子と、お二人のインタビューをお届けします。
開場時から続々と学生が詰めかけたデネブホール。一般の聴講者の方の姿も多く、元トップアスリートへの関心の高さを感じました
講演会を主催した体育会本部長の齋藤良平さんが「今日の講演会を通して、皆さまが何か一つでも学んだり、新たな発見をしてもらえたらうれしいです」とあいさつ
テンポの良いトークで、今季のカープの強さを解明
講演会はタレントの住本明日香さんを進行役に、トークセッション形式で行われました。最初に、セ・リーグ2連覇を達成した今季のカープの戦いぶりを回顧。野村さんは「選手が自信をもって戦っていた。チームとして充実期に入っている」、山内さんは「控え選手のレベルが高くなり、選手交代の選択肢が増えたことが勝因では」と語りました。
「カープ女子」の住本さん。聴衆をぐいぐいと引きつけるリードで、テンポよく講演会が進んでいきます
野球解説者のお二人は、話術も一流。随所にユーモアも取り入れたトークは時に笑いを誘い、終始和やかなムードで講演会が進みました
新人時代から指導者時代まで、学生たちに経験を語る
ともにプロ野球でトップレベルに到達したお二人に入団当時の思い出をお聞きしました。
大学時代には日本代表に選出されるほどのエリート選手だった野村さん。最初のキャンプで、トッププロのレベルの高さを目の当たりにして驚愕したそうです。「とんでもない所に来てしまった」と後悔。「とりあえず3年間頑張って、だめだったら他の道を探そう」と思いながらひたすらにプレーしました。
山内さんは「プロのすごさを感じる間もなく、"自分はできる"と思い込み、無我夢中で1年目を過ごした」と振り返ります。そして、その年に新人王に選ばれた山内さんですが、数年後、ある方に"今のままの投球を続けていたらプロ野球人生が終わるぞ"と忠告を受けていたと告白。「当時の自分はその言葉を受け流していた。結果、それから間もなくして、自分の野球人生は終わってしまった。あの時の忠告をしっかり聞いていれば」と後悔の念が残っていることを教えてくださいました。
話題は現役時代から指導者としての日々に移ります。
2010年から5年間、ともにカープの監督、コーチとして選手を指導しました。「指導者にとって最も大切なこと」を問われた野村さんは「失敗談を伝えること」と断言。「成功の裏には見えない失敗がたくさん隠れている。それを伝えることが監督、そしてコーチの役割」と説明しました。山内さんは「選手のスイッチがどこにあるのか、それを見つけてスイッチを入れてあげること」と、
「大打者といわれる3割打者でも7割が凡打(失敗)。"失敗が許されない"という場面もあるが、トータルでは失敗の方が多い」と語る野村さん
「コーチの助言は大きなヒント。後になってその意味が分かることもありますから、絶対に聞き逃さないように」と山内さん
学生たちに語りかける 「成功の鍵は"次"への意識」
現在はともに野球解説者として活躍中の両氏。野村さんは今春、大学院に入学し、コーチング論を勉強しています。「何かを達成する度に、"次"を意識しています。野球を通じて得た経験を、今後の自分の人生に生かしていきたい」と語りました。山内さんも「興味があること、今やれることに全力で取り組んでいきたい」と意欲的です。現役時代をトッププロとして過ごし、今なお野球に関わり熱く生きるお二人。常に目標に向かって進むお二人の一言一言が、学生たちの心に響きました。
講演後は学生たちと交流 質疑応答&抽選会
質疑応答では、5名の学生が質問に立ちました。「野次は聞こえているのですか」との質問に、山内さんは「すべて聞こえていますが、何とも思いません。でも声援は力になります。選手のパフォーマンスが上がる雰囲気をどんどん作ってもらいたい」と答えてくれました。他にもカープ投手陣の構成や、コーチ退団の影響についてなど、カープファンならではの質問も続出。お二人の答えをうなずきながら聞く聴衆の姿が目立ちました。予定時間を超えてもなお、たくさんの挙手があり、お二人から何かを吸収しようという学生の意欲が表れていました。
質疑応答の後、サイン入りカープグッズなどが当たる大抽選会を開催。サイン色紙やタオル、帽子、バット、グローブなどが総勢26名に手渡されました。野村さん、山内さんが番号を読み上げるたびに歓声やどよめきが起こり、雰囲気は最高潮。当選者はステージ上でバットスイングをしたりピッチングフォームを披露したりと、会場を大いに沸かせました。
監督時代、観客席からおびただしい数の輪ゴムが頭に飛んできたという思い出話を紹介し、会場の笑いを誘う野村さんと山内さん
当選番号を読み上げる山内さん。住本さんも当選者探しをアシスト「当たった人は手を上げて~!」
当選者には、野村さん、山内さんから直接景品が手渡されました
最後に、講演会担当者の体育会本部 上本慎一朗さんによるあいさつがあり、今年のスポーツ講演会は閉幕
硬式野球部の部員に講演会の感想を聞きました。
小阪一馬さん(地球環境学科2年)
「高校時代の監督が山内さんと知り合いで、私自身も何度か山内さんにお会いしたことがあるので親近感を持っていました。野村さんが中学校時代に恩師に言われた『井の中の蛙じゃいかんぞ』という言葉は、私も小学生の頃、監督に言われたことがあります。その時は自分が一番上手いと思っていたのですが、全国にはたくさんのチームがあり、それぞれに一番がいることに、後で気付かされました。現状に満足することなく、練習を積んで結果を出して、常に『次』を追求していきたいです」
岡野隼己さん(食品生命科学科1年)
「お二人が現役で活躍されていた頃は、生まれたばかりなので記憶はほとんどありませんが、偉大な選手だったということは知っています。山内さんがおっしゃっていた『監督やコーチの指導が納得できず飲み込めなくても、後になって言われた意味が分かってくる』という話は、私も同じような実体験があり、とても共感できました。指導者からの言葉を大切にしていきたいですね。『野次が聞こえても気にならない』という、プロのメンタルの強さも見習いたいと思いました。部内のレギュラー争いはもちろん、来季のリーグでも上をめざして戦っていきたいです」
伸びる若者の共通点 それは...
プロ入り前は大学生として過ごした両氏に、改めて広島工大生へのメッセージなどをお聞きしました。
――大学生が今、やるべきことは何でしょう。
(野村さん) とにかくたくさん「失敗すること」でしょう。自分が何をやりたいのか。それを目標に、失敗してもいいから動いてみることが大切です。
(山内さん) 学生時代の私は野球に熱中。とにかく野球だけを懸命にやってきました。好きなこと、熱中できるものをとことん追求してほしい。
――「伸びる若者」に共通点があるとしたら、どんなところだと思いますか。
(野村さん) しっかりあいさつができる人が成長します。カープの監督に就任して最初に選手たちに言ったのも「あいさつ」でした。長沼健さんと川上哲治さんとの対談の中でも、伸びる若手に必要なこととして「あいさつと整理整頓」が挙げられていました。
(山内さん) 素直さと我慢強さですね。何かを得ようと思えば、我慢を強いられることが多い。得るものと我慢するもの、優先順位を付けられる人が伸びています。
――最後に広島工大生にメッセージを。
(野村さん) 学生の時はとにかく「楽しむこと」。大人に近付くにつれて、なかなか楽しめなくなってきます。大いに楽しんで、経験するすべてをこれからの人生に生かしてください。
(山内さん) 今すぐに分からないことでも、いつか分かるときが来ます。「ああ、あれはこういうことだったのか」と。だからこそたくさんの経験をしてほしい。人生に無駄はありません。
お二人の学生時代、そして現役時代の経験と苦労は、現代の学生たちにも共感できる「宝の山」だったのではないでしょうか。失敗を恐れず、今やりたいことに全力で取り組むというお二人からのメッセージを胸に、学生たちは今後の学生生活、そして人生を一層有意義なものにすることでしょう。ご講演いただきありがとうございました。