「美しい幾何学図形を素材とした自動作曲法」と題した特別講演をオンライン開催
2021.11.01
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情報処理学会中国支部は、10月10日の「デジタルの日」に合わせた特別講演会をオンライン開催。情報工学科・梅村教授が登壇しました。
教授は「美しい幾何学図形を素材とした自動作曲法」という独創的な研究について講演しました。
自動作曲システムが生み出した作品
梅村教授(右下)。左上は進行担当の情報コミュニケーション学科・山岸教授
自動作曲については、大量の音楽をAIに読み込ませ、ディープラーニングで曲を生成する研究がなされています。しかしここには2つの懸念がある、と教授は指摘します。
「一つは既存曲の模倣ではないか、という点。もう一つは、生成メカニズムが人間には全くわからない点です」
教授の自動作曲には、これらの懸念が全くありません。
定規と歯車を使って美しい幾何学模様を作るSpirographの手法をコンピュータで再現し、一筆書きの幾何学模様を作ります。その複雑な模様を、システム上でなぞります。1点目がなぞり始めた後、何秒か遅らせて2点目にも同じ模様をなぞらせます。その両点を直線でつなぎ、「弦」を作るのです。
Spirograph(スピログラフ)とは、曲線による幾何学模様を描くための定規の一種です。
スピログラフの手法を応用し、コンピュータで幾何学模様を作成。パラメータ次第でいろんな形が作成できます
弦の右の点が図形をなぞり始めた後、弦の左の点が遅れてスタートすることで、弦が伸縮します
弦の伸縮を波形に変換。その波形に合わせ、音階を割り当てます
2つの点のスタート時間やスタート位置を変更することで、無数の波形パターンを作成可能
両点の位置の違いで、弦の長さは刻々と増減します。その長さの違いを波形として記録。波形に音階を割り当て、音楽的ルールに則って処理を施し、曲に仕立てる。これが教授の開発したSpiroMuseです。
「両点のスタート時間や位置を変えると、一つの模様から複数の波形を生成できます。例えば波形1はホルン、波形2はオーボエ、波形3はコントラバス...とパート分けすると、交響曲のような演奏も可能です」
波形を音楽的ルールに則って5段階で処理。違和感のない曲に変換
基の図形を変更すると、生成される曲の雰囲気も変化
「今回用意したサンプルはクラシック調の曲が多かったのですが、J-Pop風やロック調へのアレンジもできます。また、基の模様が変わると曲の雰囲気が変化するなど、生成できる音楽は多彩に広がるのです」
と教授は胸を張ります。
講演後、聴講者から「興味深い研究だ」「自分も使ってみたい」といった声が寄せられていました。
この研究が進むことで、未来の作曲家はシステムだけになるかもしれません。