「無電柱化」による景観保全と防災の可能性を考える「宮島・土曜講座」を開催
2021.12.06
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本学は20年以上、宮島地区における町家と町並みの景観保全に関する研究に取り組んでいます。そして成果を地元の方々と共有し、「まちづくり」についての様々な視点を提供するため「宮島・土曜講座」を定期的に実施しています。 今回は、京都大学経営管理大学院より大庭哲治准教授を講師に招き、「無電柱化」について考えました。
講座の会場となった宮島まちづくり交流センター。展望台から五重塔が見えます
会場入口には宮島のシンボル的存在、大杓文字も
「無電柱化とは電力線や通信線などをまとめて地中に埋設したり、軒下配線や裏配線を行うことです。宮島の町家通りが無電柱化されると景観保全につながりますが、より大きなメリットが防災なのです」
と、大庭准教授は語ります。
「電柱が地震や台風で倒れると危険ですし、歩道を狭くして交通事故を誘発する遠因ともなります。ロンドン・パリ・香港など海外では無電柱化100%の都市が少なくありません。一方、日本では、東京・大阪でも50%以下です」
背景にあるのが、電線・通信線を地下埋設する工事コストの高さ。そして、
「何より問題なのが、無電柱化の科学的エビデンス不足です」
講師の大庭准教授
会場来訪とオンライン参加の約30名が出席
電力会社や通信会社の電柱データは各社がバラバラに保有しており、地域全体の電柱数や地下埋設状況を示す総合的データは未整備のまま。これでは、無電柱化が防災や景観保全にどれだけ寄与したかわかりません。
「台風により停電・通信障害の被害を受けたある地域では、住民の6割以上が再発防止策として無電柱化を挙げています。別の地域では、無電柱化で地価上昇した効果も見られます。これらのエビデンスを積み上げ、因果関係を明らかにすることが、無電柱化推進に欠かせません」
と大庭准教授は締めくくりました。
講座世話人の工学部環境土木工学科伊藤教授
ゼミの学生が運営をお手伝い
最後に、本学の森保名誉教授が、
「無電柱化に取り組む上で示唆に富む講演でした。宮島にふさわしいあり方を考えていきたいと思います」
と講座を総括しました。
講座参加者から「都道府県で無電柱化の格差が大きいのはなぜ?」などの質問が出されました
総括コメントを述べる森保名誉教授
宮島・土曜講座は定期的に実施し、宮島の今後につながる知見を蓄積していきます。
ご講演頂いた大庭准教授、ご出席頂いた住民の方々や関係者のみなさん、ご参加いただきありがとうございました。