地域社会へ研究や学びを提供「公開講座」を開催しました~前編~
2022.06.20
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本学では毎年、高校生以上の一般の方々を対象に、大学で行われている研究や学びの一端を提供しようと、公開講座を開催しています。今年度はテーマを「Society5.0を支える情報技術~一人ひとりの豊かな未来社会の実現に向けて~」に設定。Society5.0実現に寄与する技術動向や課題について、情報学部の教員が解説しました。
5月14日の講座を担当したのは、情報工学科・鬼追教授と土井教授です。
Society5.0実現の基盤になる技術について解説しました
鬼追教授は「可逆計算と量子計算:情報処理における物理的限界」という題目で講義を行いました。
一般的なノートパソコンは、僅か30ワットの電力で1兆回/秒の演算を行っています。しかし原理上、このエネルギー消費は0にできるというのです。
「"情報の物理学の父"ランダウアーは、入力数値などの不要な情報を消去するとき、すなわち不可逆な計算を行うときに熱が発生するという"ランダウアーの原理"を唱えました。熱の発生を抑え、計算機の処理速度を早めるには、情報を一切消去せず残したままにする、言わば可逆計算ができる回路を作れば良い。その可能性を秘めているのが量子計算、つまり量子コンピュータです」
と、教授は方向性を示しました。
「集積回路の微細化は限界に近い」と鬼追教授
可逆計算機の実現には、なお多くの課題を抱えています
土井教授の題目は「コンテンツに付加価値を埋め込むデータハイディング技術」。
デジタルコンテンツを流通させる際、著作権などの重要な情報を埋め込む"データハイディング"技術が不可欠。その手法には、ステガノグラフィや電子透かしといったものがあります。
「電子透かしの一つに、画像の黒い部分の輝度を意図的に1だけ変化させて情報を埋め込むやり方があります。ビット数で見ると明確な変化ですが、人間の目には全く感知できません。これにより作品の質を落とすことなく、重要情報を秘匿できるわけです。
それでも重要データを攻撃・改ざんし不正利用しようとする試みは後を絶ちません。データハイディング技術のさらなる進化が求められます」
と、教授はまとめました。
デジタルコンテンツに重要情報を埋め込むためのさまざまな手法を紹介
「著作権保護などが適正に行われることで市場は健全に成長する」と土井教授
Society5.0を構成する多様な技術に触れ、来場者からは「とても興味深かった」と好意的な声が上がっていました。
ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました。