全国9工科系大学が、宮島町家の課題解決に取り組む~工大サミット連携PBL(課題発見編)
2022.09.29
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「工大サミット」参加大学である、愛知工業大、大阪工業大、神奈川工科大、芝浦工業大、東北工業大、福井工業大、福岡工業大、北海道科学大(オンデマンド参加)、そして本学による、大学連携のPBL(課題解決型学習)を実施しました。
本工大サミット連携PBLでは、本学で開講している授業科目「地域課題解決実習」に工大サミット9大学の学生が参加し、現地調査に基づいてその保存と活用に向けた解決策の提案を行うことを目的としています。テーマは、世界遺産・宮島(廿日市市)の江戸期から昭和初期までに建造された「宮島町家」を取り巻く現状と課題についてです。
調査・発表を行うのは、所属の垣根を超えた大学混成のグループ。 8月19日、宮島に8つの工科系大学の学生52名が集結しました。 この授業科目は全学部全年次を対象としており、参加学生は、1~4年までとバラバラ。建築系・環境系を中心に、機械系・電気電子系・化学系・情報系と学科も多彩です。
参加した各大学の学生たち
大学混成で8つのグループを形成し、それぞれテーマを設定
学生たちは最初に、宮島歴史民俗資料館(旧江上家)と、地域環境宮島学習センター 通称:宮島こもん(旧佐々家)を訪問。本学建築工学科・金澤雄記准教授と建築デザイン学科・光井周平准教授より、町家の特徴や性質、構造について説明を受けました。
また環境土木工学科・伊藤雅教授は、
「2021年8月、宮島門前町は重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に選定された」
「町家通りを散策する観光客は、宮島に来島する観光客の5%程度」
「来島観光客はコロナ前で年間400万人だが、そのうち宿泊客は10分の1以下」
など、宮島町家の地理や現状をデータで解説しました。
「これが自分の家なら...と考えてみるといい」と金澤准教授
「町家の意匠と耐震性の両立、という課題もある」と光井准教授
「宮島の長所をどう伸ばすかという発想が大事」と伊藤教授
グループごとに、フィールドワークのポイントについて打ち合わせ
「なぜ宮島に宿泊しないんだろう?」と相談する学生たち
その後、学生たちは、宮島東町の町家通り、商店街、海岸通り、あるいは西町へフィールドワークに出発。地元の方々に「町家をどうしたいと思っていますか?」と尋ねたり、観光客に「町家通りを知っていますか?」と話しかけたり。積極的に調査を実施しました。
町家を活かしたリノベーションを手がける人にヒアリング
町家の活用を調べるため、外観を調査
西町は厳島神社の出口なのに、人が少ないのはなぜ?
外壁をトタンで補修する例が学生の目を引きます
商店街では町家がどうコンバーションされているか確認
フィールドワークを終えた各グループは、調査内容を共有。
「商店街は賑やかだけど、町家通りは静か。ホッと一息つける空間であるところがいい」
「海岸通り、商店街、町家通り、東町・西町と回遊する仕組みがないか」など感想を述べあいました。
「タクシーのクラクションなど観光客への配慮もされていると感じた」
「観光客が多い東町のように、西町を盛り上げる策を考えたい」
工大サミット連携PBL2日目がスタート。
前日の宮島でのフィールドワークを基に、各グループの課題を吟味。ネットなどを使って他地域の事例なども集め、ブラッシュアップします。
各グループはどんな課題を見出したか?
模造紙や付箋紙を使ったKJ法を活用したり、内部環境・外部環境のプラス・マイナス要素を整理するSWOT分析など学んだ手法を駆使し、考えをまとめていきます。
「町家通りみたいな空間って他にある?」「尾道が近いのでは」
「路地裏が面白いよね」「住んでみたい人もいるかな」
「空き家の使い方が大事」「ゲストハウスにするといいね」
「休憩スペースがもっと必要」「レトロ感はSNS映えすると思う」
いよいよ発見した課題の発表です。
プレゼンには、宮島のまちづくりに関わる廿日市市役所の職員と、宮島町家の研究に長く携わる本学名誉教授の森保洋之氏が審査員として出席しました。
廿日市市役所の二宮さんと好本さん
本学の森保名誉教授
宮島の「夜の観光」についての可能性を問うグループもあれば、東町に比べ観光客の少ない西町のあり方を探るグループ、あるいは町家通りの景観を阻害するトタン補強をテーマに取り上げたグループもあります。
どの学生も、スライドの見せ方やタイトルにもこだわったプレゼンを行いました。
1班は宮島に宿泊する観光客の少なさに着目しました
2班は宮島西町における島内活動の少なさなどに焦点をあてました
3班は町家通りをセミパブリックな空間と捉えた研究を深めたいと話しました
4班はトタンが景観活用の障害になっている点を指摘しました
5班は町家の魅力を伝えるツールのあり方を模索
6班は、室外機や自販機といった景観に馴染まない設備への対処を取りあげました
7班のタイトルは「ええとこじゃ!宮島町家」。宮島滞在時間を増やしたいと考えています
8班は、空き家の活用法などを考えたいと発表
廿日市市の二宮さんと好本さんは「どの指摘も、私たちが実感するものばかり。ぜひ一緒に解決策を考えてほしい」
と語りました。森保名誉教授は、「独自の観点を持った発表ばかりですごい。宮島の未来につながる課題発見になる」
と、強く学生たちの背中を押しました。
限られた時間の中で、想像以上のがんばりを見せた学生たち。
9月に実施予定の解決提案編には、北海道科学大の学生もグループに加わります。
最終日にどのような解決案が提案されるのか、期待が膨らむばかりです。