福山市の海で、無人潜水探査ロボットによる"クラゲ除去"実験を実施
2022.09.15
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本学の知能機械工学科 安助教のゼミでは、遠隔操作型無人潜水探査ロボット(ROV)を活用した「クラゲ除去」というテーマに取り組んでいます。
その成果を試すため、福山市・田島漁業協同組合の協力のもと、ROVで港内に浮遊するクラゲを除去する実証実験を行うことになりました。
港でのクラゲ除去実験を実施した安助教と学生たち
ROVは大人2人で運べるコンパクトサイズ
安ゼミ開発のROVは、機体内に取り付けた8つのスラスタにより、前進後退、方向転換、など海中を自在に行動。カメラや計測用センサも備え、2時間程度の連続航行が可能です。
機体下部にはクラゲの吸引口を装備。陸上の操縦者がコントローラーで操作しながらクラゲに近づき、次々に吸い込むのです。
学内の実験用プールでは実験を重ねていますが、実際の海に出るのは2回目。
「前回の実験では、吸引フィルターでうまく破断できない、操作にラグ(人間がコンピュータに命令を入力してから命令が実行・反映されるまでの遅延時間)が発生するなど課題を得ました。これを改善して、2回目の挑戦です」と安助教は語ります。
海面に浮遊するクラゲの群れをめざすロボット
ロボット搭載カメラからPCに送られた映像を確認しながら、機体をコントロール
ロボット搭載カメラに映ったクラゲの様子
「現地実験では、研究室では得られない多くの発見がある」と安助教
港内にはクラゲが悠然と浮かんでいます。安助教と学生は早速、ROVを起動。海中に投入し、潜航しました。
カメラの映像を確認しながらクラゲの群れに近づき、吸引口を向けると...。クラゲはスルッと吸い込まれ、瞬時に破断されて排出されました。
しかし海上を浮遊するクラゲには、吸引口がうまく届きません。そこで、ゼミの3Dプリンタで製作した、L字型の上向き吸引口に付け替え再チャレンジ。捉えるのに時間はかかったものの、海面浮遊のクラゲ吸引も何とか成功しました。
駆除されたクラゲの破片は、魚やウミガメなどの生物や、動物プランクトンや海藻などの養分になることが期待されています。クラゲが大量発生すると、クラゲが成長するために食する動物プランクトンの量が増え、生態系の生物多様性が失われます。そこで、クラゲが大量発生する前に駆除作業を行うことで、大量発生したクラゲが食べる予定だったプランクトンを他の生物らが食べられるようになり、生物多様性を維持・回復できるようになることも期待されているのです。
吸い込まれたクラゲはフィルター内で瞬時に破断され排出されます
漁協関係者からもらうアイデアも、改良の参考になります
実験後、安助教は
「漁協関係者の方々に"吸引口に焼肉網のようなガイドをつけると、クラゲを誘導しやすくなる"というアドバイスをもらったので、次回の実験に活かそうと思います。こうしたアイデアに出会えるのが、実地実験の良さです」と語りました。
実験を見守っていた田島漁業協同組合の組合長・兼田雅彦氏は
「網に引っかかったり、船のエンジンにつまってトラブルを起こすなど、クラゲ被害は本当に深刻。クラゲ除去ロボットには大いに期待しています」と話します。
15cmサイズのクラゲが、2~3cm程度まで破断されたことを確認
駆除後のクラゲの破片と1円玉のサイズを比較。小さく破断されたことが分かる
「実験の着実な進歩を感じる」と兼田氏
「吸引口に関する新たな課題が見つかったので、改善したい」と語る、安ゼミ4年の大重さん(広島県立安古市高等学校出身/広島県)
「深さや流れのある海で操作や姿勢の安定性を維持する難しさを実感した」と安ゼミ3年の升田さん(山口県立下松工業高等学校出身/山口県)
本学では研究成果を地域課題の解決に役立てようと、地域に積極的に入り込んでいます。クラゲ除去ロボットもその一つ。
今後も改善と検証を重ね、「クラゲ除去」の課題に向けてさらにレベルアップさせていきます。