大規模災害時における避難所の運営と避難者の体調管理を、IoTの力で効率化
2022.12.27
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豪雨や地震などの大規模災害で、住民が避難場所に身を寄せる事態になった時、問題となるのが避難者の情報管理です。住所・氏名・年齢・家族構成・持病といった情報を口頭や手書きのやりとりのみで管理するのは煩雑ですし、避難生活に必要な食料や物資などを行き渡らせるのも容易ではありません。避難所は共同生活のため、プライバシーを守ることも難しく、また、決して良好な環境とは限らないため、ストレスなどで体調を崩した人をいかに早期に発見し、医療に結び付けるか、という問題もあります。
そこで本学の地域防災減災教育研究推進センターとIoT・AI・データサイエンス教育研究推進センターが協働する形で、IoTにより避難所運営を効率化するシステム構築の試みがスタートしています。
今回、広島市安佐北区で行われた地震避難訓練に、両センターの教員と学生が参加。住民の協力を得て、大規模な実証実験を行いました。
IoTにより、避難所運営の効率化をめざします
前方で避難所に訪れた住民にICカードを配り、後方で住民情報を記録
来所した住民に手渡すICカードで、避難者情報を一元管理
声を文字変換する音声認識端末も用意。大人数の避難者データベースが手早く構築できます
実験にあたった地域防災減災教育研究推進センター長の渡壁教授は、「IoTを活用すれば、避難所運営が効率化できるのではないか、という発想を以前から持っていました。この度、IoT・AI・データサイエンス教育研究推進センターと協働し、分野を横断したさまざまなデジタル技術を導入して避難所運営の効率化に向けた実証実験に取り組むことになったのです。ここで提案するシステムが確立すれば、避難所生活の利便性が向上すると共に、運営者となる自治体の手間も大幅に削減できます」と語ります。
「この実証実験を材料に、自治体への導入を提案していきたい」と渡壁教授
住民にはスマートウォッチをつけてもらい、脈拍などを測定
体調不良の住民が動けない状態になっていないか見守るセンサも用意
ペットの排泄などのため動くことの多いペット同伴避難者も、センサがあれば所在管理ができます
「IoTで、避難所生活の負担を減らしたい」と林教授
実証実験に参加した両センターの教員と学生たち
IoT・AI・データサイエンス教育研究推進センター長の林教授は、「避難所運営にICカードを導入することで、避難者の点呼作業や食料配給作業が3倍ほど早くなりました。またスマートウォッチや見守りセンサにより、避難された高齢者の方々の健康管理を支援することもできます。さらに実験を重ね、システムをレベルアップしたいと思います」と語ります。
今後も本学は、テクノロジーの力で社会の様々な課題に応えていきます。
※新型コロナウイルス感染症対策を講じ、取材・撮影を行っています。