これからの建築には、意匠・機能に加え「環境」の視点が不可欠~建築デザイン講演
2023.01.04
このニュースは、クローズされました
建築デザイン学科では毎年、第一線で活躍するプロの建築家を招き、建築現場の最前線について学生に語っていただく講演会を開催しています。
本年は、建築設計事務所 株式会社SUEP.を主宰する末光弘和さんを講師にお招きしました。風や熱、水、音などのシミュレーション技術を駆使した環境建築に取り組む末光さんの話に、教員・学生約200人が興味深く耳を傾けました。
九州大学で教鞭を取り、デザインラボBeCATの代表も務める末光さん
環境をシミュレーションし、自然と共生する建築を提案
「従来、建築デザインには意匠性と機能性が求められていました。しかし社会が複雑化した今日、これらに加え、さまざまな問題を解決するための建築が求められています」
そのために末光さんは、デジタル技術による環境シミュレーションを建築に採り入れているのです。
「風、熱、音などの目に見えない環境を解析するソフトが今は安価で手に入り、小規模事務所でも実行しやすくなっています」
木の周りの熱や風の経時変化を解析した模式図
多くの学生が熱心に聞き入っていました
末光さんは、自身の手掛けた実践例をいくつか紹介。太陽と海風のポテンシャルを最大限に引き出した淡路島の住宅や、巨木を切り倒さずに共生した台湾の商業施設など、環境建築の有り様を示す数々の事例が、学生たちの興味をひきつけていました。
太陽の動きから日差しをシミュレーション。どの建築も太陽との関係を捉えるのは大事です
帽子のつばのような素材が、日差しと風を程よく取り込みます
中央にそびえるマンゴーの巨木を活かして構築した台湾のオフィスビル
生物とともに生活する暮らしを提案したコーポラティブハウス
講演の後半は、学生との質疑応答です。
学生「環境シミュレーションとデザインが矛盾することはないのか?」
末光さん「複合的要因を広く捉え、シミュレーションして比較検討すれば、最適解は見出だせる」
学生「風や熱、音など質の異なるパラメータを評価する際、迷いはないか?」
末光さん「そこが建築家の腕の見せどころ。パラメータに左右されるのではなく、どういった物語を紡ぎ出すか、が重要になる」
と、全ての声に丁寧に応じていただきました。
多くの学生が末光さんに質問
講演終了後の末光さんを尋ねて質問する学生も
末光さんの言葉は、多くの学生の胸に刻まれたことでしょう。今後も本学は、学生の好奇心を刺激する出会いを提供していきます。
お忙しい中ご助力いただいた末光さんに、深く御礼申し上げます。
※新型コロナウイルス感染症対策を講じ、取材・撮影を行っています。