建築・環境系学科同窓会「五三会」主催の建築設計競技を開催~建築デザイン学科
2023.01.16
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広島工業大学の建築・環境系学科の卒業生による同窓会「五三会(いつみかい)」が主催する『第49回五三会建築設計競技』の公開審査と表彰式が行われました。
今年度のテーマは『未来の広場』。審査員に建築家の安部 良さん(⼀級建築士事務所安部良アトリエ主宰)を迎え、被爆建物として現存する国内最大級の煉瓦建物「旧広島陸軍被服支廠」を題材に、学生たちは、歴史的な建物が今後どのように活用されるべきか、時代とともに求められ変化する公共の場としての「未来の広場」の在り方を考え、提案しました。
本学以外にも広島大学大学院、九州大学大学院、近畿大学の学生が参加
旧「五」日市町「三」宅の地で学んだこと、また建築学科の学生番号が「5」だったことから「五三会」と名付けられた学科独自の同窓会は1973年に発足しました。以来、社会で活躍する卒業生たちが集い、お互いに啓発し合う会としてさまざまな活動をしています。中でも「建築設計競技」は、在学生たちの成長を願い挑戦の場を用意したいと始まり、今年で49回目を迎えたコンペです。
同コンペには全国から15作品の応募があり、8作品が1次選考を通過しました。この日は1次選考を通過した学生たちがそれぞれのプランを発表し、受賞作品が決定しました。
本学からは建築デザイン学科3年の松岡さん(加古川西高等学校出身/兵庫県)、⽯井さん(岡山県立東岡山工業高等学校出身/岡山県)、岡田さん(高知県立宿毛工業高等学校出身/高知県)、古谷さん(愛媛県立八幡浜工業高等学校出身/愛媛県)による『歴史を解き、未来を積む』が優秀賞に選ばれました。また、入賞作品には同じく建築デザイン学科4年の⼩⽟さん(広島県立広島井口高等学校出身/広島県)と原さん(広島県立福山誠之館高等学校出身/広島県)の『体験をアーカイブする。』が選ばれました。
本学の卒業生である教員も五三会に所属し、企画・運営に参加する
今年度の審査員を務めてくださった安部さんは広島県出身の建築士で、早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻 修士課程を修了後、数々の建築に関わり、2020年には 総務省地域力創造アドバイザーに就任。瀬戸内海に浮かぶ豊島のコミュニティスペース「島キッチン」で2021年日本建築学会賞作品賞を受賞しています。
「デザインをいかに実現するか」に軸を置いた質問を学生に投げかける安部さん
学生のプランには、いくつもの川が流れる「水の都ひろしま」にある「旧広島陸軍被服支廠」を文化の創造と歴史から学ぶ場となるよう「水」を多用したもの、建物の規則的に並ぶファサードに注目し、ここを遊歩道やサイクリングで人々が行き交う拠点にするもの、手を加えずありのままの姿を残し、鎮魂の象徴として人々が集う場所にするものなどさまざまな提案が並びました。
優秀賞の『歴史を解き、未来を積む』は、鎮魂の象徴として残すのではなく人々の暮らしに溶け込み、この場所を「自分ごと」として捉えながら、歴史や平和について考える場としての提案をしました。入賞の『この空間には終わりがない』は、この場で営まれた体験も建築の一部であると定義し、建物の保存ではなく体験を保存するプランとして、建物を地下に埋めるという斬新なアイデアが発表されました。
公開審査は対面とオンラインのハイブリット形式で開催された
学生たちは夏ごろから着手し、プレゼン資料や模型の制作も手掛けた
3作品が選ばれた後に最終プレゼンテーションをする学生たち
入賞者は3月に行われる「旧広島陸軍被服支廠」関連イベントにも出場できる
優秀賞の『歴史を解き、未来を積む』の4人は「歴史的建造物を遺構にするのではなく、ここで生活できるようにし、ここにアイデンティティを持つ人々が増えることで、歴史を語り継いでいける方法を考えました」と作品にかけた思いを伝えてくれました。
「昨年、先輩が競技に参加しているのを見て、自分たちもやりたい」と参加を決めた
入賞『この空間には終わりがない』を提案した2人。「建物を保存するのではなく地下に埋めるのは、初めからのコンセプト。いかに実現するかに注力しました」と話します。
4年次生の2人は卒業制作と並行したタイトなスケジュールの中参加した
建築デザイン学科の平田教授は「著名な建築家からコメントをもらえ、他大学の学生とも交流する機会を通じて、学生たちの視野が広がる貴重な機会です。厳しい意見もありましたが、社会に触れる良い経験になったと思います」と振り返ります。
本学の卒業生で「五三会」のメンバーでもある平田教授
在学生のためになることをと卒業生が49年続けてきた歴史あるイベントは、コロナ禍でもオンラインで開催し欠かすことなく続けられていました。次回は記念すべき50回を迎えます。学生たちの新たな挑戦を楽しみにしています。
※新型コロナウイルス感染症対策を講じ、取材・撮影を行っています。