北広島町と取り組むオーダーメイド自助具の体験コーナーを出店 ~みんなの健康フェスタ
2024.06.25
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本学では北広島町と包括連携協定を締結し、また社会実践プロジェクトとして、同町産木材を使用した高齢者や障がい者向けの自助具(スプーン・食器)の開発に取り組んでいます。
現在までに、福祉施設を実際に訪問して食事をしている高齢者を観察し、工学的視点から特徴や問題点を分析。その結果をもとに試作した自助具で使いやすさをアンケート調査し、使う人の症状に合ったベース形状を確定させました。
最終的には、アンケート調査することなく、食事風景を撮影して送ってもらうだけで一人一人に合ったオーダーメイド自助具が供給されるシステム「北広島モデル」の構築を目指しています。
今回は、実際に製作した自助具を多くの人に触れてもらう機会になればと、同プロジェクトのメンバーが5月に開催された『みんなの健康フェスタinアルパーク』に出展しました。
柄の角度など形状の異なる4種類の自助スプーンと、食べ物がすくいやすいように"返し"が付いた食器を展示し体験してもらう自助食器を開発した藤葉さん(広島県立海田高等学校出身/広島県)
実際に食事もしてもらい「木の感触もよく、食事が楽しくなりそう」「親や自分の将来のためにも必要」などの感想をいただいた
ステージにも登壇し、蒲生さん(香川県立観音寺第一高等学校出身/香川県)が代表してこれまでの取り組みを紹介
子どもたちも楽しめるコーナーも設置。ヨウ素液を用いて食品に"でんぷん"が含まれているかを確認した
自助具は体が不自由な人が、日常生活の動作を容易に自分で行えるよう補助するものです。自助スプーンも市販されてはいるものの、形状の種類が少なく症状の異なる利用者に寄り添った道具とはいい難い状況です。このプロジェクトでは、利用者に最適な形状の自助具を提供できるスシテムの開発を目指しています。
今回持ち込んだ自助スプーンは、指先に麻痺のある高齢者の食事風景を観察し、何度も試作しながら完成させたものです。柄の途中に突起状のフィンが付いているのが特徴で、指で挟んでしっかり保持できます。
柄の角度や皿の角度・ひねり、突起状のフィンの角度などが異なる4つの試作スプーンを使ってもらい、最適な形状を追及している
同プロジェクトは今年で4年目を迎え、建築デザイン学科、情報工学科、知能機械工学科、生体医工学科、食品生命科学科の5学科が関わり、それぞれの専門性を生かしたプロジェクトに成長しています。
例えば情報工学科では、試作の自助スプーンを使い食事をする際の動作解析を行っています。
手首、腕、肩など人の骨格を認識するソフトを使い、食べる動作を数値に置き換え、特徴などを分析する
自助具の研究に興味がありゼミを選んだという吉田さん(広島県立高陽高等学校出身/広島県)。先輩の研究を引き継ぎ卒論にまとめる予定
建築デザイン学科では、動作解析の結果をもとに最終的な自助スプーンの形状をデザインします。3DCADのデータから北広島町の木材を使ってCNC加工機で実体化し、細部を研磨して滑らかにした後、塗装をして仕上げます。
数値を変えるだけで自助スプーンの形状を調整し、3Dデータ化するソフトを学生が開発。3Dモデルの作成時間が飛躍的に短縮された
春休みを使ってソフトを開発した荻野さん(広島県立広島井口高等学校出身/広島県)。授業で使う3DCADを応用した
同プロジェクトの最終ゴールは、高齢者や障がい者一人一人に合ったオーダーメイド自助具の提供を第一歩として、福祉サービス全般の「北広島モデル」を実現することです。例えば、高齢者にとって食べやすく、栄養価の高い食材の開発が食品スーパーなどとの協力で始まっています。北広島町の資源を使って、新たな産業の創出につながる「北広島モデル」を構築し、地域に貢献するプロジェクトになるよう研究を続けていきます。